« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2013/11/27

キャプテン・フィリップス

映画.comにて『キャプテン・フィリップス』のレビューを執筆しております。お時間ある方はぜひご覧ください。

“ジェイソン・ボーン”シリーズのポール・グリーングラス監督が手掛けた本作は、2009年にソマリア沖で実際に起こった事件をベースに描いたもの。グリーングラス印の手持ちカメラによる臨場感に満ちた構成は相変わらずで、ふたを開けてみれば緊迫感のつるべ打ち状態。そんな中でも彼の演出は、けっして表面的な状況描写にとどまることなく、元ジャーナリストらしく、事件の向こう側にあるものを透視図のごとく浮かび上がらせてくるものでした。

その意味では、上記のレビューには書いておりませんが、ひとつには海という舞台を通じて極めてアナログな形で“グローバル”の世の中を提示してみせたことに衝撃を受けました。我々はグローバルと言う言葉にネットかなにかの極めて電子的な繋がりをイメージしがちですが、この映画ではソマリア沖という舞台を通じて、決して出逢うはずのなかったソマリア海賊と米船舶クルーの両者が激しく魂を衝突させることになります。もはや世界はどんな細部においても繋がっていて、たとえばソマリアの漁村の貧困がやがて若者達の海賊化を引き起こし、それがいつしかフィリップス船長以下クルーの生命を脅かす事態にまでドミノ的に直結してくるのです。

Captainphillips01

もうひとつは、上記のレビューでも触れているのですが、冒頭でフィリップス船長が口にする「サバイバル」という言葉がやはりどうしても胸に突き刺さってくるのです。出航前の妻とのひととき、フィリップスは息子らがこれから放り出される激しい競争社会を憂い「サバイバルの時代」と表現します。この一言によって、その先展開していくフィリップス船長自身のサバイバルもまた大きく違った意味合いをの光を放つことになります。『キャスト・アウェイ』(2000)から13年が経過し、トム・ハンクス主演のサバイバル映画という意味では時代がちょうど一周しました。ちょうど同じ時期に同様のサバイバルを主題に掲げた無数の作品が公開ラッシュを迎えていることも、すでに多くの人たちによって指摘されています。

知恵と勇気を振り絞ってなんとか生き抜こうともがくフィリップス船長の姿は、単なるアメリカ的なヒーロー像とは全く異なる、むしろ現代に生きる我々の姿を如実にさらけ出したものなのかもしれません。それゆえ、観賞後もまるでバトンが手渡されたかのように、感動や爽快とはまた違う、深い余韻が身を支配するのではないでしょうか。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2013/11/22

フィルス

Filth_2
現在、渋谷シネマライズ他にて公開中の英国映画『フィルス』。この映画の劇場用パンフレットに寄稿しております。ご機会ございましたら、ぜひ手に取ってご覧ください。

なお、この映画に関しては映画.comでもレビュー執筆しております。併せてご覧頂ければ幸いです。

|

2013/11/19

【レビュー】ハンナ・アーレント

冒頭、路上に放置された懐中電灯の灯りは、次のシーンではアーレントの煙草の火へと移り変わる。アーレントは思考の過程でゆっくりとその煙草をくゆらせる。時には長椅子に横たわりながら。そして時には窓からの景色を眺めやりながら。

ふと気づくと、外には無数の灯り。夕べの到来。そして河の向こう側には一斉にアーレントに対して視線を注ぐかのような街の灯りが浮かび上がる。非常に象徴的な場面である。こちら側とあちら側。これから描かれることが極めて孤独な闘いとなることは最初から目に見えていたーーー。

05

続きを読む "【レビュー】ハンナ・アーレント"

|

« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »