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2015/04/05

ワイルド・スピード SKY MISSION

2013年、ポール・ウォーカーが死んだ。車での事故死だったという。その衝撃的なニュースは世界を駆け巡り、映画ファンは衝撃と哀しみに沈みながら、同時に誰もが思った。「撮影中の最新作、どうなるんだ!?」。シリーズ第7弾にあたる『ワイルド・スピード スカイミッション』は撮影半ばにして主演を喪うという悲劇に見舞われたことになる。でもスタッフやキャストはこの映画の製作を中止せず、公開日をいったん後退させた上、製作続行する道を選択した。

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同様の悲劇が起こった映画としてテリー・ギリアム監督の『Dr.パスナサスの鏡』が思い出される。あの時、ヒース・レジャーが3分の2くらい演じたところで亡くなった。ハプニング続きの現場を幾度も乗り越えてきたギリアムもこれにはさすがにショックを受けたと言われる。しかし彼らはやはり製作を中止することなく、レジャーの役どころをジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウが後を継ぐかたちでストーリーに修正を施し、その結果、映画は思いがけない怪作に仕上がった。

今回の『ワイルド・スピード スカイミッション』ではポール・ウォーカーの兄弟がカバーに回っている。ポールのボディ・ダブルの役目を担ったり、声の吹き替えを行ったりと尽力し、また技術チームもCGIで細かな修正を施しながらポールの喪失を補っていった。その結果、どうだろう。奇跡、いや仲間の友情の結晶と言うべきか、いやそんな安っぽい言葉は必要ないな。ここに刻まれた「結果」が全てを物語っている。本作は間違いなく、歴史にその名を刻む傑作アクションに仕上がった。

今回のテーマは「リベンジ」。冒頭からグッと来る。ロンドンの代名詞とも言うべきテムズ川やタワーブリッジ、鋭角な高層建築物“シャード”を窓越しに望んだかと思うと、そこに今回の宿敵ジェイソン・ステイサムの眉間に皺を寄せた表情が映り込んでくる。その後に続くシークエンスにニヤリ。

序盤はいかに彼がヤバい男なのかを次々と見せつけていくのだが、あのザ・ロックとも互角に肉弾戦を繰り広げる格闘技の実力を持ちながら、特殊部隊出身ゆえに銃器や爆発物の取り扱いも手慣れたもの。ゴーストのごとく不意に姿を現しては、弟(前作で倒れたラスボス)の仇を打つべく次々と制裁を加えていく。

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もちろん『ワイルド・スピード』はカーアクションが命なのだが、それがコブシとコブシの対決でも一向に飽きさせないのが良作の証し。たとえばここでは「相手を掴んで勢い良く叩き付ける」アクションでも、ひと工夫ほどこされている。滞空中にカメラの角度がにわかに変わり、観る者の水平感覚を分からなくさせてから、一気に床へと叩き付ける。あるいはオフィスの机やソファをアクションに絡めることで、それらの回転に応じてカメラもクルリと横に動く。これらの手法を取り入れることでいずれもなんだか一瞬、重力を操られたかのような不思議な感覚が味わえるのだ(試写室の最後部から見ていると、皆がカメラの動きに合わせて首を真横に傾ける様子がうかがえた)。こういったところにも、今や最大の人気を誇るアクション映画ブランドとしての絶え間ない“見せ方”の追究ぶりが伺える。

説明的な部分で決してもたつかず、要らないところは猛スピードで省略しながら舞台や国を次々と移動する。中盤にはカート・ラッセル率いる政府系のエージェントたちが絡んでくるのだが、資金面でも技術面でも全面的に支援してくれるので話はさらにスピードアップ。かといって、レースシーンでオネエちゃんの尻を大映しにするところなどは省略せずにちゃんとやる。そしてステイサムのみならず、「神の目」という監視プログラムの開発者が絡んできてからはストーリーに更なるスピンがかかる。お馴染みのレースやアクロバティックな山道でのカー・アクション、それからステイサムへの包囲網は徐々に狭まっていき、遂にはLAの街全体を扱った一大バトルへと突入していく。

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今回はとことん走る。走り尽くすし、その狭間にこれでもかというほど胸のすくアクションを詰め込んでくる。多分、彼らは息切れしても走るのをやめない。これくらいやればもう十分だろうと満足できたとしても、その気持ちをリミッターで抑制せず、さらにもう一歩先の風景へと進めようとする。スピードを高めようとする。その想いの中心にはやはりポールがいる。身を切るほどの喪失感は彼らにしか分からないだろうが、少なくともスクリーンから「とにかく走る」という姿勢が猛烈に伝わってくる。映画に関わった誰もがポールにとってのラスト・ランに全身全霊を捧げている。その想いに胸が熱くなる。だからこそ観客も一瞬一瞬を見逃すまいと自ずと前のめりに成らざるを得ない。

そして全ての闘いが終わったところで迎える風景のなんと美しいことか。2時間14分の激走の終わりに、何ともググッとくるエンディングが用意されていて、思わず涙が込み上げてしまった。ポール、これまで本当にありがとう。あなたの走りは素晴らしかった。そして、あなたの仲間もまた最高です。この映画と仲間を、天国で大いに誇ってください。

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