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2018/05/06

ホース・ソルジャー

思えば最近、ジェリー・ブラッカイマー製作の映画にお目にかかる機会がめっきりと減った。90年代から00年代にかけて、特に『ザ・ロック』や『アルマゲドン』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの頃は、あの道脇の木に落雷するプロダクションマークが映画の高揚感を否応なく高める序曲の一部だった気がする。同じような勢いが再来することはないにしろ、久方ぶりに「そうそう、このノリ!」と笑みがこぼれそうになったのが『ホース・ソルジャー』だ。今回は想像力を駆使した荒唐無稽な戦場アクションというわけではない。きちんと史実に基づく、それも9.11以降のアフガン戦線において長らく軍事機密として伏せられてきた内容の映画化だという。

12_strong

原題を『12 Strong』と銘打っている割には、12人のキャラクターを満遍なく印象付けるには尺も描写も足りない。が、少なくともクリス・ヘムズワースとマイケル・シャノン、それにマイケル・ペーニャあたりの個性は彼らの演技力も相まって実に際立っている。絶妙な呼吸や些細なやり取りで怒りや戸惑いやおかしみを分かち合うヘムズワースとシャノンの関係性は本作のまさに大黒柱となる部分だ。それに上官役としてブラッカイマー映画の常連であるウィリアム・フィクトナーが顔を出しているのも嬉しいところ。気になって調べると、フィクトナーもすでに還暦を超え、ブラッカイマーに至ってはもう74歳だという。そりゃ、製作本数が減少するわけだ。

過去にも軍事アクションを数多く手がけてきたブラッカイマーだが、今回はまた特殊な状況設定が光る。今回の舞台はアフガニスタン。最新鋭の軍備と機動力を誇るアメリカ軍だが、ひとたびアフガンの地を踏みしめれば、これまでの常識がことごとく通用しないことが明らかとなる。厳しい自然。直進することを許さない大地。切り立った岩肌。そして一つ間違えば気を失いそうなほどの気圧との戦い。この地でミッションを成功させるには、いかに部族と友好関係を結び、彼らの協力を仰ぐかが重要だ。そこで最初にアドバイスされるのが「馬を使え」ということ。今にも崩れ落ちそうな山々をこれで超えながら、タリバンが占拠する主要都市を陥落させるべく奔走するのである。

最新鋭の銃器や無線機器、それに座標軸さえ伝えれば空からの強力な爆撃を加えることも可能な彼ら。しかし移動だけは「馬」。この特殊な掛け合わせが、これまでにない戦争映画の質感をスクリーンに刻んでいく。飛び交う弾丸やロケット、そこかしこで巻き起こる爆発などをよけながら一丸となって騎馬部隊を突撃させていく様子は、もはや南北戦争や戦国時代の関ヶ原にでもタイムスリップしたかのような不思議な感覚を彷彿させる。そして両軍が衝突し合う混沌とした戦闘シーンをある種の切実さと緊迫感、さらには多少のカタルシスすら加味しながら、骨太にまとめ上げていく豪腕はやはりブラッカイマーならでは。つくづく戦争アクションというものは、瞬間瞬間を点で描くのではなく、いかにして一連のうねりを独自のハーモニーとしてまとめ上げていけるのかが勝負となる。超大作の戦場を幾度もくぐり抜けてきたブラッカイマーはそれをよく知っている。

訓練ばかりで一度も実戦経験のないヘムズワース演じる役どころと、アフガニスタンの地で何十年も部族間の抗争に身を晒してきた部族長。主人公が彼に教えを請いながら、しかし最終的には自らの熱い使命感で彼らを突き動かしていく様子は、どこかこれが劇場デビューとなる新人監督とベテラン製作者ブラッカイマーの関係性とも似ている。いや、ブラッカイマー映画ではこれ(ベテランVS新人)はおなじみの構図ではあるのだが、これほど現状と映画とが重なり合ったことはなかったのではないか。ぜひブラッカイマーにはもうひと花もふた花も咲かしてもらいたいところである。


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