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2019/03/22

ブラック・クランズマン

スパイク・リー監督による並外れた豪放。エンターテインメントの範疇で観客を笑わせ、60年代の実話ベースの逸話にドキドキさせながらも、核たる部分には現代アメリカに対する強い告発の精神がみなぎる。よくぞこれほど時代を皮肉った題材を見つけたものだ。

主人公が身分を偽って、謎の組織の奥深くへどんどん侵入していくという、ある意味、伝統的なコンラッドの「闇の奥」的なストーリーライン。だがここではさらにツイストがかかる。何しろターゲットとなるのは悪名高き白人至上主義団体クー・クラックス・クラン。それにメスを入れる主人公はアフリカン・アメリカンの刑事。彼が電話でアポを取り、さらにそこへフィジカルに潜入するこれまたジューイッシュ系の刑事とくるのだから、事態はなんだか妙にややこしい。だが、事態はねじれても、話が混乱することはない。むしろテーマはいたってシンプルだし、人種差別をめぐる本作の立場をより鮮明に、快活に浮き彫りにしていく。グリフィスの「國民の創生」も重要な場面でかなり大々的に組み入れられる。映画の教科書たるこの一作について事前に踏まえて劇場へ臨むのも一つの手だろう。

エンタメ性あふれるストーリーを尊重しつつも、本作及びスパイク・リーが最も大切にしている部分が恐らく二つある。その一つは映画の最後、スクリーンが暗転する間際であることは明白だが、もう一点、序盤の演説シーンで映し出される聴衆の顔、顔、顔が極めて鮮烈だ。浮かんでは消えていく。消えてはまた次々と浮かび上がる。こういったシーンに盛り込まれるスパイク・リーの骨太な精神に改めて圧倒されるひとときだった。

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