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2019/09/04

第11回福岡インディペンデント映画祭 3日目

■いよいよ最終日。中洲川端から六本松まで走ろうかと思ったが、外へ出てみるとあいにくの雨。地下鉄で会場へと向かう。この日は日曜日ということもあり、会場の福岡市科学館内は目をキラキラと輝かせたお子さん方でいっぱいだった。もちろん彼らは映画祭を見に来たわけではなく、各種展示スペースや、プラネタリウムを兼ねたドームシアターへと吸い込まれていく。そんな流れに抗うように、私は今日もサイエンスホールを目指し、ここでひたすら映画を観る。

 

*3日目


●最終日は良質のドキュメンタリーが並んだ。まずは昨年の映画祭で受賞した『葛根廟事件の証言』。個人的に今年の夏は例年以上に戦争がらみの多くのTVドキュメンタリーを視聴していた気がするが、本作もまた知られざる歴史の一幕に光を当て、74年前の記憶へ深く深く潜行していく一作。そこで明かされる事実に思わず「あっ・・・」と溜息が漏れた。ナレーションを介さず、生存者の方々の証言のみを丁寧に重ねていく手法から、作り手の「このありのままの事実を、どうか多くの人に知ってほしい」という祈りのような思いが伝わってくる。

●続いて、【座・高円寺】ドキュメンタリーフェスティバル・コンペティション部門大賞作品『ヤメ暴〜漂流する暴力団離脱者たち’18』の上映。暴対法の施行後、全国の組員数は激減したものの、その中で更生し、一般社会へ溶け込むことができた人たちはほんの一握りだという。本作はそういった“ヤメ暴”と呼ばれる人たちの実態を描いた作品だ。國村準さんの深み(そして凄みも)あるナレーションに乗せ、描かれゆく個性豊かなキャラクターたち。ドキュメンタリーではあるけれど、劇映画にも増してハラハラドキドキさせられっぱなし。上映後に登壇した下野賢志監督は、TV局で報道番組を手がける傍ら、時間を見つけては現地へ向かい、取材を重ねていかれたとのこと。会場には昨日(2日目)に自作の上映を終えたばかりの小野監督、谷口監督らがおられ、クリエイターならではの両者の質問がとても興味深く、さらに会場のお客さんが述べられたご感想にも胸打たれたひとときだった。

●また映画『ねぼけ』上映のプログラムでは、これまでの映画祭にはない、独自の趣向が観客を魅了した。本作は落語が題材ということもあり、まずは主演の友部康志さん(本物の落語家さんだとばかり思っていたら、俳優さんとのこと。驚きました)による落語が一席もうけられた後で、その温められた空気のまま本編上映へと突入。物語の内容が落語とリンクしていく巧みな作りを堪能できたのはもちろん、壱岐紀仁監督が壇上で語られた「いま何気なく手にしている幸せは、決して当たり前のものではない。いつかはふと消え去ってしまうものかもしれない。だからこそ、いつもそばで支えてくれる大切な人々へ感謝を捧げるような作品を撮りたかった」という言葉にもまた胸打たれた。この言葉に触れることで本作は完結したのだと思った。壱岐監督とこの日のために駆けつけた神保慶政さんのトークセッション、さらに出演者の舞台挨拶と、華やかな午後の時間が過ぎ去っていった。

●映画祭ラストを飾ったのは、福岡インディペンデント映画祭が10周年を記念して制作した『夢告を視たり。-butoh is everything-』。福岡市文化賞受賞の舞踏家、原田伸雄さんと、彼が創設した「舞踏靑龍會」に密着したドキュメンタリーだ。私のような舞踏とは何の縁や接点のない人間でも、原田さんが白塗りと純白のドレス姿でいざステージに立たれる姿を目にするや、すぐさまその世界観に引き込まれ、言葉を超えた想い、価値観、森羅万象に包まれているような心持ちになれる。団員の方々の尊敬に満ちた目線が原田さんに注がれ、原田さんもまた唯一無二の視座で団員の方々へ多くの教えと愛情を注ぎ続ける。その関係性と絆がひしひしと伝わってくる作品だった。

●以上で福岡インディペンデント3日間のプログラムは終了。「知らない世界を覗き見る」というテーマ通り、鑑賞した作品の数だけ知らない世界に触れることができたことを嬉しく思う。東京から駆け付けた身として、この福岡には非常に特殊な地の利があると感じた。福岡だからこそ皆が集い、互いの成果を称え合い、そして敬意を持って互いの世界観に触れ、柔軟に刺激しあえる。その中心にあるのはスタッフの方々の人柄だろうか、それとも“美味しいもの”の存在だろうか。加えて、福岡はどこから来るにも、どこへ行くにも便利。今後ますます多くの映画人や観客が集い、交流し合い、多種多様な「交差点(インターセクション)」を生み出す映画祭となることを期待してやまない。今回も素晴らしい日々をありがとうございました。

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