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2020/03/10

ヒッチコック「救命艇」

相変わらず真夜中にヒッチコック映画を見続けている。今夜は'44年の作品『救命艇』。冒頭、客船がもくもくと煙を吐きながら海上へと崩れ落ちていく。どうやらUボートの攻撃にやられたらしい。その惨憺たる状況から逃れた一隻の救命艇。この4畳半ほどの空間が本作の舞台で、ここからの視点だけで物語が完結する。つまり究極の限定空間モノにして極限の密室劇。ヒッチコックは他にも『ロープ』『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』など限定空間を舞台にした作品をいくつも作り上げているが、これはその頂点たるものだ。一人、また一人と、救いを求めこの海上の舞台に乗り込んでくる登場人物たち。性別はもちろん、人種や職業や階級も違う。それに撃沈されたUボート側の乗組員まで加わることで、複雑な疑心暗鬼が生まれ、濃密な心理ドラマが展開していく。ゆらゆらと揺れる艇内でびしょ濡れ状態のキャストたちの姿からは、いくらスタジオ撮影とはいえその過酷さがうかがえる。大戦中に製作された映画ながら決して固定観念に縛られず、自分たちが人間としてどうあるべきかを描き出そうとするあたりにメッセージ性も見出せる。アカデミー賞では監督賞、原作賞、撮影賞にノミネート。ヒッチコックは新聞広告のイラストにてカメオ出演。

Lifeboat

 

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