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2020/03/28

『断崖』(41)

相変わらず、毎晩の精神安定剤のようにヒッチコック映画を摂取している。おかげさまで眠りも深い。特に白黒映画というものは視覚的な刺激を抑え、心を和らげてくれる効果があるのかもしれない。本日は『断崖(原題:Suspicion)』という作品。見るからに思わせぶりなタイトルだが、驚くべきことに序盤はなんともメロドラマ的な展開が続く。列車内での男女の出会い。逢いびき。駆け落ち同然の結婚ーーー。ああ、このまま二人のラブゲームが続くのかと思ったその時、ケイリー・グラント演じる男が放ったセリフがこれまでのどんなサスペンスやミステリーにも増して衝撃的だった。「カネ?俺、全然持ってないよ。無一文なんだ」。

そこからジョーン・フォンテイン演じるヒロインの葛藤の日々が始まる。実は、夫は虚言癖の塊みたいな男で、しかも一つ間違うと何をしでかすかわからない危なっかしさがある。疑心暗鬼にかられた妻は、だんだん夫のことが信じられなくなり・・・というお話。原作ものだが、ヒッチコックは案の定、結末をガラリと変えたそう。このジワジワと絞められていくような展開を、いつの間にかのめり込みながら見ている自分に気づいた。夫婦間のサスペンスは恐ろしい。通常ならグラントはヒッチコック作品でユーモラスな役柄を演じることが多いのに、時にはこんな役もやっちゃうのかとヒリヒリしたものを感じた。その意味ではかなり異色作と言っていい。というわけでおやすみなさい。

 

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