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2020/05/28

『ワイルド・ローズ』

とても気持ちのいい映画に出会った。音楽の聖地ナッシュビルを夢見るカントリー歌手の物語————そう書けばアメリカンドリームを掴みとろうとする米映画お決まりのパターンかと思われるかもしれない。しかし、そもそもこれは英国映画だし、舞台はスコットランドのグラスゴー。さらに主人公の女性歌手は今ようやく刑務所を出たばかりで、二人の子持ちのシングルマザー。才能は確かにある。誰が聞いたってそのパワフルでハートフルなパフォーマンスと歌声は絶品だ。しかし現実を見つめるとそんな悠長なことも言ってられない。毎日の生活があるし、守るべき家族もいる。そんな中、思いがけないチャンスに見舞われた彼女は、夢と現実に引き裂かれながら人生の岐路に立つことに・・・。

本作が素晴らしいのは、夢を追いかけることも、現実を見つめることも、どちらも決して否定しないところだ。その両方を抱きしめようとする主人公の姿はクライマックスに向けて人間的な深みを増していく。「それが運命ならば、どの道を歩もうともいずれ叶う」。幾度か繰り返されるこの言葉が、その都度、違う響きをもって胸に迫ってくる。

主演のジェシー・バックリーの素晴らしさもさることながら、本作を支える影の功労者は母親役の名優ジュリー・ウォルターズかもしれない。彼女は『リトル・ダンサー』でビリー少年を導くバレエ教師役で一躍脚光を浴びた人である。思えば『リトル・ダンサー』もバレエの才能が開花するとは思いもしない炭鉱町を舞台に、少年が意志を貫き、夢を掴みとろうとする映画だった。さて『ワイルド・ローズ』はどんな運命を運んでくるのか。いずれにしても本作に触れた人は、まるで雷に打たれたみたいに感化され、主人公ローズの歌をもっともっと聴きたくてたまらなくなるはずだ。

ワイルド・ローズ公式サイト

 

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