2016/01/23

『サウルの息子』インタビュー

衝撃。苦悶。そして闇に差し込む一筋の光。映画の枠を超えたと言ってもいい衝撃作『サウルの息子』が公開中です。それは観客をアウシュヴィッツの現実へと突き落とし、「ゾンダーコマンド」という役割を担う男の目線に寄り添わせる物語。

ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞し、アカデミー賞の同部門でも最有力・・・そんな冠など正直どうでもいいと思えるほど、生涯忘れ得ぬ鮮烈ないかずちを打ち込まれる映像体験です。恐ろしいという感情など吹き飛びます。むしろこの一瞬一瞬を目に焼き付けたい。そう思わせる力強さを持った作品でもあります。

本作を手がけたユダヤ系ハンガリー人のネメシュ・ラースロー監督にお話しを伺いました。

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人間が内に抱えた凶悪性ーアウシュヴィッツ収容所で「ゾンダーコマンド」は何をしたのか/ウートピ

どんな剛腕な巨匠かと思ったら、なんとこれが初長編作となる新米監督。そして私とおんなじ38歳。

「インタビュー中の撮影はやめてほしい。話すことに集中できなくなるから」

という一言から始まった今回の取材。なかなか目を見て話してくれないなど、ちょっとシャイでナイーブな印象さえ受けるラースロー監督でしたが、そんな彼がこんな強烈な映画をこしらえてしまうところがまた凄い。 ぜひぜひ彼の言葉に耳を傾けてほしいです。

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2010/07/05

ビルケナウの草原

アウシュヴィッツとビルケナウは一緒に論じられることが多い。『シンドラーのリスト』や「白い巨塔」に登場したこの建物は、精確に言うと、ビルケナウ収容所にあたる。ここはユダヤ人をはじめとする収容者をいかに効率よく始末するかに心血の注がれた“絶滅収容所”である。
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2010/06/28

アウシュヴィッツ

これまでの流れはこちらをご覧ください。

あー、すみません、昨夏にアウシュヴィッツを訪問したときの記録が、途中で中断(挫折?)しておりました。「今年の夏に行こうかと思ってるんですが」とメールくださったNさん、ありがとうございました。あなたのおかげで再びきっかけを取り戻すことができました。

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アウシュヴィッツ博物館でもっとも衝撃的な展示物とされるものに、アウシュヴィッツ解放後に見つかったおびただしい数のトランク、メガネ、義足、人形、髪の毛がある。

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2010/02/15

アウシュビッツの門をくぐり・・・

屈強な体格をしたその専門ガイドは、30人ほどに膨らんだ英語ツアーを手慣れた調子でふたつに区切り(家族を真っ二つに分断された中学生くらいの青年が、慌ててガイドの手をくぐりぬけ両親の側へと滑り込んだ)、一方はあちらのガイドについて行きなさい、そして他方は僕のチームだ、と言い渡した。

館内ツアー参加者は皆、ヘッドフォンを着用している。いくつもの言語ツアーが交差するので、それぞれの周波数がツアー単位で設定されている。こうすればガイドも大声を張り上げずに、胸元のピンマイクに語りかけるだけで事足りる。

「それじゃ、出発しましょう」

「労働は自由をもたらす」と書かれた門をくぐると、路の脇に大きな樹木が生い茂っている。続いて、規則正しく建てられた木造遺構が目に飛び込んでくる。
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一見どれもが同じに見える。かつてここで起こった歴史が刻まれたそのひとつひとつが、そのままの姿で歴史を語り、なおかつ内部を資料館として開放している。

空からは灼熱の太陽。

わがツアーは建物の中へ入っていく。陽光からしばしの逃亡。しかしその内部は薄暗い上に冷房もなく、外とおなじ蒸し暑さが続いていた。
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ガイドはひとつのパネルの前に皆を立たせる。そこには英語とポーランド語でこのような言葉が書かれていた。

"Those who cannot remember the past are condemned to repeat it."(過去を忘れる者はそれを繰り返す)ジョージ・サンタヤナ

「我々はまずこの言葉からスタートしたい」とガイドが切りだす。「これこそ当博物館が発足以来、基本理念として掲げてきた言葉であり、今日みなさんと共に改めて確認していきたいことでもあります」

円を描くように広がった15人が、ガイドの説明に一様にうなづく。最初は文字や写真、パネルの展示が続く。たとえば、ヨーロッパのどれほど広大な地域からアウシュビッツの囚人たちが集められてきたのかを示すグラフ図。また彼らの送還された理由の内訳。

ソ連兵の捕虜。ポーランドやドイツの政治犯。同性愛者。ロマ・シンティ。ユダヤ人。他にも障害者や聖職者など。
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大きく掲示されたモノクロの写真の中で幼い男の子の目がこちらを見つめていた。ほかにも表情を奪われた人たちが、境界線の向こうから写真の前に立つ者だけに視線を送る。当時、この場所でシャッターを切ったのはナチスの腕章をした者だったのか、あるいは単なる仕事として機械的な記録撮影を任された者だったのか。

いずれにせよ僕らは、その“何者か”の目線を借りることで、当時の人々と対峙する。写真には何の感情も刻まれていなかった。憐れみもなければ、何かの決定的な瞬間を選び取ろうとする芸術的感性であるとか、同じ人間に対する親密な態度も存在しない。ただの乾いた記録である。

きっと歴史の教科書や資料集で眺めればいろんな感情が湧きあがっただろう。でもなぜか、ここでは何にも感じられなかった。僕の心は大切な物をすべて自宅に置き忘れてきたかのように“からっぽ”で、この写真も、撮った人間も、みんなからっぽだと想った。これじゃ何も写ってないのとおんなじだよ、と想った。

おかしいのかもしれないが、それが率直な感想だった。

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2010/02/08

奪われた看板

ずいぶん長い時間が経った。

アウシュビッツ訪問記のことを忘れていたわけではない。それは常に十分すぎるくらい意識していたし、アウシュビッツに関する本も大量に読んだ。そうして意識するたびに何も書けなくなった。何のための意識なのか分からなくなってしまった。時間だけがただただ過ぎて行った。

そんな中、年末にアウシュビッツの門に掲げてある看板部分が何者かによって奪い去られるという事件が発生した。ヨーロッパのメディアは揺れた。数日後に実行犯は逮捕。失われていた看板は3つに分断されて発見された。事件を支持したネオナチの男はいまも逃亡を続けているという。

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「労働は自由をもたらす」

アルファベットの3つめの「B」のバランスがちょっとおかしいのは、この看板の設置を命じられた収容者がせめてもの抵抗として「B」のプレートを逆さまにしたから、とも伝えられている。そんな象徴的な看板である一方、終戦に至るまでナチスがこれに気付きさえしなかったことにはまた別の恐怖を抱かざるをえない。

そして、書き散らされた僕の訪問記は、ちょうどこのアウシュビッツの門を映し出したまま終わっていたのだった。

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当時の写真とほぼ同じアングルで撮った写真である。
路の脇に植えられていた樹木が今ではこんなに青々と茂っている。

久々にアウシュビッツ博物館のホームページを開いてみた。かつては読み進めることが死ぬほど恐ろしかったものの、今ではだいぶ冷静に見つめられるようになっていた。

NEWSの項目に事件の経過が添えられている。返還された看板は数カ月の検査と修復を経て元どおりになる予定だという。それまでは代わりにレプリカの看板が据えられるらしい。

それから僕はウェブカメラでその様子を確認してみる。レプリカの下を見学者たちが通り過ぎていく。その様子は僕の訪問時と全く変わっていないように思えた。

真っ白な雪、以外は。

Arbeit

そろそろ、半年前の記憶とふたたび真向かう時間のようです。
また続けていきます。
気長にお付き合いいただければ幸いです。

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2009/10/02

Auschwitz6

英語ツアーの開始は13時半。胸に小さなワッペンを貼り、先ほど僕が止められた入場口を通り抜ける。貸与されたヘッドフォンの周波数チャンネルを合わせると、"Can you hear me?"と男性の声が語りかけてきた。声の主は誰か?いつの間にか参加者の前にはサングラスの人物が姿を現していた。どうやら彼が僕らのガイドということらしい。

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2009/09/22

Auschwitz5~入場口で途方に暮れる~

アウシュヴィッツと呼ぶにはあまりにギャップのある長閑な緑地帯の風景に目を奪われながら、いよいよアウシュヴィッツ博物館の正面玄関に足を踏み入れる。

ふと高校時代の購買部を思わせる売店が目に飛び込んできた。高校時代を彷彿とさせる理由として、ここに調理パンが売られていたことが挙げられる。ひとつ2ズロチ(80円くらい)の調理パン。ポーランドの売店ではとにかくこの調理パンをよく見かける。パッケージングされてはいない、剥き出しのままで売られている調理パン。

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2009/09/16

Auschwitz4~オシフェンチウムへ~

バリツェ・エキスプレスを使うと約15分でクラクフ中央駅に到着する。もうこの時点でイギリスの宿泊先を後にして7時間が経過していた。現地時間では午前11時。アウシュビッツ訪問に関する様々な記述を読むと「午前中にクラクフを出発」が基本とされているので、僕にはもはや一刻の猶予もなかった。

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2009/09/15

Auschwitz3~バリツェ・エキスプレス~

ヨハネ・パウロ2世・クラクフ・バリツェ国際空港に機体が降り立つと、シートベルト着用サインが消えない内から皆が「せーの!」で一斉に立ち上がる。我先にと荷物を抱え、一本しかない機内の通路を埋め尽くすのである。すっかり出遅れた僕は「いちばん最後に降りようかな」くらいのノンビリした態度で身構えていたのだが、ここで僕はまず最初のビックリに直面することとなる。

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Aucshwitz2~格安フライトでポーランドへ~

「アウシュビッツ」という名前が頭に浮かんだ時に、僕はすぐにドイツの地図を広げていました。しかしそれはちゃんとした義務教育を積んできた大人ならすぐに間違いだと気付くはず(実際にはポーランドにあります)・・・10分後、まだドイツの地図を拡げて格闘を続ける僕がいました。

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