2019/10/07

クロール -凶暴領域-

一言で表現すると、ワニ映画である。ハリケーン迫る中、一人暮らしの父親を心配して娘が実家を見に来ると、そこにはなぜか凶暴なワニが!そこから父娘がなんとか逃げ延びようとするパニック・ホラーが展開していくわけだが、これが90分弱の中で非常によくまとまっていて楽しかった。監督は数々のホラーやバイオレンス作でも知られるアレクサンドル・アジャ。

まずもって娘が水泳選手というのが鍵だ。彼女がプールでトレーニングに打ち込む冒頭を目にするだけで、僕らの脳裏には、ヒロインがやがて水中でワニとデッドヒートする未来絵図がなんとなく予想できるはず。それにこの父娘は長期にわたって仲違いしており、性格の似た分だけ衝突も多い二人が最大のピンチを前に共闘するのも大きな見どころだ。

もう一点、ホラー映画では「家」が一つの精神世界を成すことが多いが、本作でもまず深層心理を示す「地下室」から始動し、様々な記憶や感情をぶちまけながら、徐々に上へ、上へと上り詰めていく。こうして状況を克明に描きつつも、自ずと内面をもうかがい知ることができるのだ。教科書通りと言えばそれまでだが、ジャンル映画の枠内を端から端まで思い切り泳ぎ切ったなかなかの力作だった。

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2019/09/24

「ホームステイ ボクと僕の100日間」(2018)

あの傑作アニメの原作が海を越え、なんと今度はタイで実写映画化。文化や日常が丁寧に(タイ式に)翻案されて、とても見応えのある作品に仕上がっていました。そんな新作「ホームステイ ボクと僕の100日間」について映画.comでレビューしています。気になった方は是非お読みください!

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「エイス・グレード」(2018)

ネット文化が当たり前のようになって、生活が変わった。人が変わった。思考法や感情のあり方、そして自己表現の方法も大きく変わった。それを映画がナチュラルに物語の体内へ取り組むことができるようになるまで随分と時間がかかった気がするが、『search』や『エイス・グレード』のような作品はその現時点での到達点と言えるのだろう。

本作は無口な学校生活を送りながら、自宅で密かに動画をアップし続ける(でも視聴者数は一桁)YouTuberがヒロインだ。中学校から高校へと進学する成長の狭間に立ち、彼女はなんとか今の自分を変えたいと願っている。その必死さゆえに、彼女は何よりも自分の心を保つために配信し続けているようにも見える。悲しいのは、その洞穴の中へ向けて叫び続ける声を、誰一人として聞いていないどころか、聞こえてさえいないことだ。

無口な日常、気まずい父娘関係、視聴者数一桁。もしもこれだけを世界の全てとして受け止めたら、それはあまりに絶望的な現実だ。だが実際はそうではない。気づくか、気付かないかで、人生は大きく変わる。このようにあらゆる世代が文学や映画や音楽を通じて何度も何度も輪郭線をなぞって謡いあげてきたテーマを、本作はネット文化を使って普遍的かつ爽やかに描ききろうとする。父親役のジョシュ・ハミルトン、最高である。

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2019/09/18

「アス/Us」

ジョーダン・ピール監督の最新作『アス/Us』について書きました。

戦慄ホラーの中に現代社会への視点を潜ませた、ジョーダン・ピールの監督術/CINEMORE

Handsacrossamerica

Us

夜な夜な、自分にそっくりな姿のモンスターたちがやってくる・・・というホラーなんだけれど、映画が終わって「あれは一体何だったのか?」と考えると、思いもしなかったいろんな気づきや発見がこみ上げてきます。

ここに書いてることが正解か間違いかではなくて、いろんなことを考えさせられる、ってところがこの映画のポイントなんだと思います。

ネタバレありなので、鑑賞済みの方にしかお勧めできませんが、気になった方はお読みいただければ幸いです。

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2019/09/04

アモーレス・ペロス

メキシコ出身の名匠アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが2000年に発表した長編デビュー作『アモーレス・ペロス』について書きました。

Amoresperros

イニャリトゥが亡き息子に捧げた喪失と再生の物語/CINEMORE

彼の作品は創る側が激しく魂を削り、観る側もまた魂を削る。そうやって少しずつ両者が共鳴していくひとときーーーー。東京国際映画祭で出待ちしたことのある私にとっては、とても忘れがたい作品。いろいろ調べながら、様々な思いが隠されていたことを知り、理解が深まりました。ご興味ある方は是非ご一読いただければ幸いです。

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2019/08/27

ロケットマン

エルトン・ジョンの半生を描いた『ロケットマン』が公開中だ。もちろんこれ一本だけで十分に面白いことは間違いない。が、さらに深掘りしたいなら、ぜひ映画『リトル・ダンサー』やその舞台版「ビリー・エリオット ザ・ミュージカル」と併せて楽しみたいところ。それはなぜか?「ザ・ミュージカル」のDVD収録の特典映像によると、エルトン・ジョンは『リトル・ダンサー』が初披露されたカンヌでたまたまこれを鑑賞し、自身の幼少期(特に父親との関係性など)と重なる部分が多かったこともあり、号泣してしまったのだとか。この幸運な出会いをきっかけに製作陣との交流が始まり、本作は5年後、エルトン・ジョン作曲の珠玉のナンバーに満ちた「ザ・ミュージカル」へと進化を遂げることに————。で、『ロケットマン』は監督こそ違うものの、脚本を担うのは『リトル・ダンサー』を手がけ、エルトンと「ザ・ミュージカル」で密にコラボしたリー・ホール。かくも気心知れた間柄だけに、エルトンが大感動した「重なる部分」も、極めて丁寧に描かれていて観客の涙を誘う。そして、映画版でビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベルも重要な役で好演。これらの背景を知っておくと、ちょっとした鑑賞の助けになるかも。

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2019/08/23

『アバウト・タイム』削除シーンのこと

リチャード・カーティスによる2013年の作品『アバウト・タイム』には、ファンの間でも大きな話題となった削除シーンがある。それが「アビー・ロードの渋滞」という場面。自宅で産気づいた妻を車に乗せて病院へ向かう最中、ビートルズのジャケット写真で名高いあの観光名所でいつもの大渋滞が発生している。少しでも早く車を進めるには、記念撮影するファン達をできるだけ迅速に捌かねば。さあ、健気なティムはどうやってこの場を切る抜ける? 

キャストの間でも好評だったシーンなのだが、最終的な判断でカットされることになったようだ。カットの理由については自ら推測するしかないが、いくらこのシーンが際立っていたとしても、ラストへ向かう中でここだけ際立ちすぎてしまうと本末転倒だ。カーティス自身が、勢いのあるノリではなく、もっとしっとりとした流れで全体がまとまっていくことを望んだのだろう。

もう一点、音声解説に耳をすませていると、脚本の段階ではこの場面で「スペシャルゲストが登場する予定だった」そうで、それが叶わなかったことにより、当初の構想からやや離れたものになってしまったことも考えられる。

ともあれ、ビートルズがかの有名なジャケット撮影を行ってから8月8日でめでたく50周年を迎えた(この日はファンが大集結して大盛り上がりだったようだ)。そしてカーティスは自身が脚本を務めた『イエスタデイ』にて、これまで以上にビートルズという存在に真正面から向き合っている。惜しくも幻となってしまったが、この削除シーン、いまにつながる大きな布石となっているようにも思えるのだった。

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2019/08/14

アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜

2013年に製作されたロマンティック・コメディ作品『アバウト・タイム』について書きました

『アバウト・タイム』シンプルなタイムトラベルが気づかせてくれる宝物のような日常の輝き/CINEMORE

「家族っていいな」という映画であり、なおかつ「ありふれた日常にこそ幸福がある」という映画でもあります。当たり前のことなんだけれど、名匠リチャード・カーティスが描くとこんなにも温もりと優しさに満ちた映画になるという。。。これもまた一つの魔法のような気がします。

気になった方は是非お読みいただけますと嬉しいです。

過去のCINEMORE執筆記事はこちらから。

映画.comの執筆記事はこちらから。

 

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2019/08/01

ワイルド・スピード スーパーコンボ

いよいよ明日から公開となる『ワイルド・スピード スーパーコンボ』について書きました。

ソリが合わないという点では全くぶれない二人の最強バディ・ムービー/映画.com

暑い夏にあえて激辛メニューを食べるかのような限界越えムービー。小難しいこと一切なく、頭を空っぽにして楽しめる作品です。

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2019/03/13

山猫

『山猫』について執筆しました。

ヴィスコンティの傑作『山猫』を貫く、並外れた”本物”の精神/CINEMORE

正直言って、これまでヴィスコンティの『山猫』は私にとって大きな大きな山でした。10年前にも、20年前にも観たことはあったものの、今ひとつ理解が深められず、そのままに放置してきた宿題のような作品です。それが40歳を超えた今見直してみると、なんと胸に沁みたことか。映画は過去の一点を記録したものではありません。生き物です。それはなおも生き続け、作品も進化し続けるし、私たちの胸の中へと場所を移してからも、日々、変化を続けます。

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3時間に及ぶ長い旅を終え、バート・ランカスター演じる主人公と共に、万感の思いを込めて「星よ・・・」と口ずさんでしまう自分がいました。

ちなみに私は今回、2016年に発売された『4K修復版』のブルーレイを購入して作品鑑賞しましたが、本作は3月17日から東京都写真美術館を皮切りに全国で順次公開されるそうです。濃密な美しさを取り戻した歴史的名作をスクリーンにて鑑賞できるチャンス。ぜひお見逃しなく。

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