2020/06/12

『15年後のラブソング』パンフに寄稿しました

6月12日(金)より全国公開となる『15年後のラブソング』の劇場用プログラム(パンフレット)にコラムを寄稿させていただきました!

Julietnaked

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本作の原作者ニック・ホーンビィに関する内容です。ホーンビィといえば、映画『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』などの原作で知られると同時に、近年は『17歳の肖像』『わたしに会うまでの1600キロ』『ブルックリン』といった女性を主人公にした名作映画の脚本家としても腕をふるっています。

『15年後のラブソング』を単刀直入に言い表すと、彼の「原作もの」と「脚本もの」の両方の傾向を混ぜ合わせたようなとても魅力的な作品。ラブコメ好きな方も、決してそうではない方も、時に大笑いして、時に胸がジーンと熱くなること請け合いです。ぜひご覧になってみてください!

 

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2020/03/29

『羅生門』(50)

いくつもの県で外出自粛が言い渡されたこの週末、NHKで『羅生門』が放送された。3月23日で生誕110周年を迎えた黒澤明監督の代表作『羅生門』は、「人によって”事実”の捉え方は全く異なる」という意味合いで、今なお時代や文化を超えて世界中の数多くの映画で応用される。興味深いことに、以前見た印象と、今回改めて見た印象は全く違った。自分の中でさえ、その時々によって別人のように受け止め方が変わるのだから、これが他人どうしなら尚更の事だ。

シンプルな状況数式に次々と変数が加えられ、はじき出される数字がどんどん変わっていく。猛スピードで野山を駆け巡る主人公を照らす木漏れ日がまさにその変数をも思わせ、ある意味、万華鏡的。また、耳を澄ますと聞こえる早坂文雄の「ボレロ」風の音楽が、迫りつつあるも、なかなかやってこない”何か”を示唆しているかのよう。手が届きそうで、その実、なかなか手で触れられない。真実はかくも迷宮のごとし。我々は真の意味では究極の答えにたどり着けないことを知りながら、それでもなお手を伸ばして求め続けねばならない。それが絶望しないということだ。あのひ弱そうな志村喬の最後の表情は、己に圧倒的に欠けたものや矛盾を受け入れながら、それでも未知数を抱きしめて生きようとする姿に見えた。

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2020/03/18

ヒッチコック「間諜最後の日」(36)

真夜中に少しずつ見進めていくヒッチコック作品の数々。本日は1936年の『間諜最後の日』を楽しんだ。原題は"The Secret Agent"。 この前作にあたる傑作『三十九夜』(こちらについては過去に記事にしたこともあり)はジョン・バカンによる原作モノで、対する本作はサマセット・モームが原作。いずれの作者も諜報員だったり情報部に属する軍人だったりと、きな臭さでむせかえる世界情勢を読み解き、エンタテインメントに落とし込む才に長けていた人たちだ。

Secretagent

ただ『三十九夜』が英国内を確固たる動線をたどって駆け巡る躍動感に満ちているのに比べると、『間諜最後の日』は第一次対戦中の緊迫したヨーロッパが舞台でありながら、何が目的なのか漠然としていて、登場人物たちの目的遂行への意志も弱い。緊迫感や娯楽性の上では前作とはかなり格差が生じているのは否めない。ヒッチコック自身も書籍「映画術」(晶文社)のトリュフォーとの対話の中で、

「アイデアは決して不足してなかったんだが、映画は失敗作だったな。というのも、この種のアクション映画では主人公がはっきりとした目的を持っていて、その目的に向かって邁進しなければならない。それが映画そのもののアクションの展開の生命力になると同時に、観客が主人公に同化して完全に映画に参加するための助けになるわけだ。(中略)ところが本作の主人公には、目的があるとはいえ、それはむしろ、嫌々ながら果たさなければならない義務であって、できればそんな仕事を投げ出してしまいたいと思っている」(P.93)

と語っている。ただ、どうだろう。暗雲立ち込める第二次大戦直前の時代にこのような映画を製作するにあたって、主人公の男女が「人殺しなんてまっぴらごめんだ。この仕事を辞めて、一緒に逃げよう」と言い出したり、また敵のエージェントが残忍極まる悪役ではないところなど、決してステレオタイプに陥らない、陥らせないヒッチコックのこだわりが感じられる。彼は人間の心や信念の揺れを描くのが本当にうまい。ふとした瞬間、我々もまた、これが古典映画であることを忘れ「生身の人物」と接したかのような感情にさらされるのだ。

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2020/03/05

アマデウス

今から35年前のオスカーに輝いた傑作『アマデウス』について書きました

『アマデウス』と聞くと、クラシック音楽好きな方以外はどうしても体が膠着してしまうかもしれません。でも、これを「才能に恵まれた者」と「そうでない者」との人間ドラマとして見つめると、我々にとっても身近な物語のように思えてきます。まあ、間違いなくモーツァルトとサリエリの(フィクションをはらんだ)物語なのですが、これをあえてミロス・フォアマン監督の作家性や彼のたどった人生を通じて見つめてみました。そこで何が見えてきたかについてまとめています。

オスカーに輝いた『カッコーの巣の上で』や『アマデウス』を始め、フォアマンの作品はとにかくそのパワフルな人間描写が魅力。コロンビア大学ではジェームズ・マンゴールドの指導教授だったことでも知られる彼ですが、パワフルな人物描写といった部分はマンゴールドにもしっかりと受け継がれているように思えます。

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2020/03/04

ストラトフォード・アポン・エイヴォン

今週末公開(と言っても新型コロナウィルスの影響で上映館はごく限られてしまいますが)のイギリス映画『シェイクスピアの庭』は、我々がよく知る人気劇作家のお話でありながら、焦点が当てられるのは彼の全盛期というわけではなく、あまり知られていない時期。ロンドンのグローブ座焼失後、大きな失意を抱えて妻や娘の暮らすストファトフォード・アポン・エイヴォンへと戻った頃から晩年にかけてがメインとなります

過去にも数々の舞台や映画でシェイクスピア作品と真摯に、情熱的に向き合い続けてきたケネス・ブラナーが自ら監督と主演を兼任しており、人生を慌ただしくひた走ってきたシェイクスピアが生まれ故郷のこの町でフッと一息つくときに心の片隅をよぎっていく風景がとても美しく、丁寧に綴られています。ある理由から、彼は「庭づくり」に精を出し始めるのですが、この辺りの心象を投影させるかのような描き方にも興味深いものがあります。

続きを読む "ストラトフォード・アポン・エイヴォン"

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2020/02/09

パチーノ、デ・ニーロ、スコセッシ・・・

先述のENGLISH JOURNALの記事内では、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシという3人の歩んできたキャリアについて振り返っています。これまで映画界の極めて近しいところで伝説を築きながら、なかなか3人揃って一つの作品に挑む機会がなかった彼ら。記事内では触れていませんが、いろいろ調べる中ですごく興味深かったのは、『ゴッドファーザーPartⅡ』のDVD音声解説の中で、コッポラが冒頭にさらりとこう語っていたことです。

「PartⅡのオファーが来た時、私は正直言って、やりたくなかった。前作では映画会社と衝突することも多かったからね。だから『監督はやりたくない。プロデュースなら引き受ける』と返答した。すると『ならば、他に監督として推薦できる人はいるか?』と聞かれたので、私は『マーティ・スコセッシ』と答えた。すると相手は『いや、彼はやらないだろう。他には?』と・・・」。

結局、コッポラは自ら監督することになるわけですが、ほんの一瞬とはいえ、重要な会話の中でスコセッシの名前が浮上したという事実に、かなりドキドキしてしまう自分がいます。もしもこの時、万が一、いや100万分の1にも、3人のコラボが実現するようなことがあったなら、映画の歴史は今とはだいぶ異なるものに変わっていたかもしれません。

 

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2020/02/06

ENGLISH JOURNAL

アルクから出版されている「ENGLISH JOURNAL」最新号にて、映画『アイリッシュマン』に関する記事を執筆してます(巻頭および中ほど、計2箇所)。全国の本屋さんで発売中ですので、主演のロバート・デ・ニーロが朗らかに笑っている表紙を見かけたら、ぜひ手にとっていただけると嬉しいです。

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気がつけばアカデミー賞授賞式まであとわずか。『アイリッシュマン』も作品賞をはじめ複数の部門にノミネートされており、レジェンドともいうべきこの面々が映画界の大きな山をどこまで征服できるのか見ものです。

この雑誌にも、デ・ニーロ、スコセッシ、パチーノのインタビューが収録されているのですが、これがめっぽう読み応え、聞き応えありました。70代後半の彼らがどんな雰囲気で映画作りを行っているのか。現役の映画俳優で「セリフ?覚えてないよ」(パチーノ)とあれほど自信持って言える人がどれだけ存在するのだろうかーーーそれでもなお、見事なまでに演技を成立させてしまうんです。そこがすごいところ。これを読んだ上でもう一度『アイリッシュマン』を見ると、また違った面白さが味わえると思います。

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フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』

この映画史上で最も奇妙かつ斬新なタイトルは、一体何を表すものなのかーーーーそんなことをずっと悩み続けていたのですが、蓋を開けてみると答えは意外と簡単でした。要はフェリーニにとってこれが8 2/1本目にあたる作品ということらしいのです。けれど、彼には共同監督作やオムニバス映画などがあるものだから、ファンや批評家の間では「これはどうカウントするんだ?」とか「計算が合わないぞ」とか、未だにその真相をめぐって色々言われている模様。中には「フェリーニの幼少期、就寝時間は決まって8時半だった」ということを由来としてあげる説もあるらしく、もう僕にはよくわからなくなってきました。というわけで、映画監督としての心の内側を思い切り吐露した傑作『8 1/2』について書かせてもらいました。ぜひご覧くださいませ。

 

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2020/01/27

フェリーニの『甘い生活』

どうやら私が学生の頃、フェデリコ・フェリーニ作品は映画を愛する者にとって必須の教科書のように言われていたらしい。あえて「らしい」という表現を使ったのは、こと私自身に至っては、誰かにそう言われたわけでも、見ろと強制されたわけでもないからだ。私に映画の師匠はいなかったし、映画研究会に所属して映画の見方を習ったわけでもなかった。ただ、そうはいっても、新宿TSUTAYAで目にするフェリーニ作品は、セルでもレンタルでも圧倒的な存在感があり、私にとってそれは手を出したくても出せない高い壁のようにすら思えた。そこを登らないと次の景色が見えてこないのはわかっているのに・・・。私はその山を迂回して別の景色ばかりを目にして生きてきた。で、結局、いつかは忘れ物を取りに、元の場所まで戻ってくる羽目になるのだ。

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そんなわけでフェリーニの『8 1/2』に続いて『甘い生活』を見た。3時間に迫る映画だ。かつての新宿TSUTAYAでもレンタルVHSをよく見かけたが、パッケージの印象からして甘いラブストーリーなんだなと思っていた。もし私に師匠がいれば「ばかやろう、むしろ怪作の部類だよ」と教えてくれたはずだ。

線形のストーリー構成から華麗に逸脱したこの映画は、当時のタブロイド紙を賑わした様々なセンセーショナルなニュースが元になっている。それらをちりばめた7日間が、マルチェロ・マストロヤンニ演じる新聞記者の目を通してタペストリーのごとく綴られていく。

さすがフェリーニ。あっけにとられる描写が多い。特筆すべきは冒頭、ヘリに吊り下げられたキリスト像がローマ上空を滑空するシーン。そして中盤、聖母マリアを見たという少女たちをめぐって人々が大集結する場面。さらにはラスト、海辺に怪魚が打ち上げられるシーン。いずれも幻想性を丁寧かつ繊細に浮かび上がらせ、イマジネーションが炸裂する。

やがて各エピソードの総体から浮かび上がるのは、当時の社会性や時代性だろうか。説教じみたことは一つもない。むしろそうやって様々な日常や事件を投げかけられ、共にその場の空気を吸い、ローマの7日間を共有したかのような余韻がこみ上げる。そんな3時間。もっと若き日に出会いたかった・・・正直、そう思ったが、これはこれで、今しか成し得ない唯一無二の出会いだったようにも思える。早いも遅いもない。最後は巡り巡って、誰もがあるべき場所に立つ。人生とはそういうものだ。

 

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2020/01/08

イーストウッド最新作『リチャード・ジュエル』

映画.comに『リチャード・ジュエル』のレビューを執筆させていただきました。
クリント・イーストウッド監督の最新作です。
さて今回はどんな切り口で社会を射抜くのか・・・。
「巨匠」とか「生きる映画史」とか「究極のアウトサイダー」と呼ばれる彼ですが、
いつもながらに感心させられるのは、全く主義主張がぶれない、そしてわかりやすいこと。

本作でも爆破テロ事件を扱いながら、単純な犯人探しの構図に落とし込むのではなく、
むしろ彼が長年こだわり続ける「悩める英雄」の姿を浮き彫りにしていく過程が面白いです。
僕なんぞがイーストウッドについて書くのはおこがましいとは思いつつも、
ぜひお読みいただけると嬉しいです。

あけましておめでとうございます。
読んでくださる方のお力添えのおかげで書き続けられております。
大変ありがたいことです。もっともっと切磋琢磨せねばと思います。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

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