2019/10/22

テリー・ギリアム監督作「バロン」

先日の『バンデットQ』に続き、同じくテリー・ギリアム監督作の『バロン』について書きました

Barron

よく「史上最大の失敗作」的な言われ方をする映画ですが、今改めて鑑賞してみると実に素晴らしい作品です。数々のトラブルに見舞われながら、それでも芸術性をいっさい安売りすることなく、思い切りイマジネーションを爆発させているところが感動的。さらに戦争という圧倒的な現実の中でフィクションというものがいかに機能しうるのか、そんな究極の問いが垣間見えるところにもハッとさせられます。

ちなみにこの作品、制作費が節約できるという理由でローマに拠点を置いたのですが(そもそもこれがトラブルの始まりだったという声も)、この地でテリー・ギリアムは何度かフェデリコ・フェリーニとも会って言葉を交わしたそう。その時、感じたこととして「撮影中のフェリーニは驚くほどエネルギッシュで若々しく、そうでない時の彼は急に歳を取ったみたいに弱々しく見えた。仕事と想像力によってこんなにも人は変わるんだな、と思い知らされた」という風に述べている。

今やギリアムもフェリーニの享年をとうに超えてしまったが、困難にぶつかってもすぐにまた起き上がって猪突猛進を続けるその勢いはまだまだ衰えそうにない。どんなサイズでもいいから、いつまでも若々しく、エネルギッシュに映画を撮り続けて欲しいものだ。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/10/21

バンデットQ

誰にでも何かのタイミングで偶然に見たり聞いたりして、タイトルはわからずとも、その後ずっと気になり続けてきた映画や音楽って一つや二つあると思う。僕の場合、その代表格と言えるのが、小学生の頃にたまたまTVで観て、まるで電流に打たれたかのように衝撃を受けた『バンデットQ』。

Time-bandits

ようやくこの映画の詳細にまでたどり着いたのは大学生の頃で、まずはモンティ・パイソンのファンになって、それからパイソンズのメンバーであるテリー・ギリアムの映画を意識して観るようになり、過去作を遡っていくうちに「あっ、この映画は、小学生の頃に見た・・・」と発見。まさか自分が小学生の頃すでにギリアム作品の洗礼を受けていたなんて、かなりの驚きでした。

今回、改めてきちんと見直してみようと思い、満を持してCINEMOREで『バンデットQ』を選んでみました。何度見ても本当にヘンな映画です。でも今ではある程度歳を重ねたせいか、その「ヘン」の中にギリアムの途方もない情熱を感じることができる。徹底的に、情熱的に「ヘン」をやり通せる大人って本当に素晴らしいし、カッコイイ。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/09/26

ヒッチコック「サボタージュ」(1936)

Sabotage-02ヒッチコック作品の中では、本作の知名度などほんの豆粒ほどにしか満たないかもしれない。が、小さいながらも、一本一本にドキッとさせるような仕掛けを潜めて観客を驚かせるのが英国時代のヒッチコックの常套手段。本作もなめてかかると痛い目を見る。タイトルからして注意が必要で、いわゆる労働者が意図的にその仕事を遅らせたりする行為のことではなく、ここでは「破壊活動」や「テロ行為」がその意味にあたる。第二次大戦前のきな臭さ漂う中、イギリス国内で大停電や爆破テロなどを画策する謎の集団に焦点を当てつつ、八百屋に扮して捜査する刑事や、容疑者の妻であり映画館の経営を切り盛りするヒロインなども絡めつつ、事態はますます複雑さを増していく。

 

中でも一つの見せ場となるのが、時限爆弾の仕掛けられたフィルム缶がロンドン中を移動し、今にも爆発しそうな緊張感が否応なく高まっていくところ。1936年の映画ゆえ、リアルな爆破シーンを活写しているわけではないが、その分、カット割りや編集の巧みさによって驚くべきシーンに仕上がっている。未見の方はぜひ一度、見ておいたほうがいい。そこからもつれ込むクライマックスの顛末も脚本が見事。いやはや恐れ入りました。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/09/19

洞窟の比喩

プラトンの著作「国家」に「洞窟の比喩」という箇所がある。

洞窟の中に手足を縛られた囚人がおり、視界すら制限された彼らは正面にある壁面しか目にすることができない。背後では火が焚かれ、壁面に様々な影を映し出す。囚われの人々はその幻影=虚像を見て「ああ、これが人なのか」とか「あの動物はこんな形をしているのか」などと、すっかり世界を理解したつもりになっている。もしもこんな状況下で、一人の人間を束縛から解き放ち、洞窟外の真実を体験させたなら、どうなるだろうか・・・。

ここで最終的に述べられるのは、教育の重要性や、教育を受けた者の使命なのだが、それにしてもこの「比喩」があまりに独創的ゆえ、僕のような人間は議論そっちのけで、ついつい状況の方に目がいってしまう。そして勘のいい方は既にお察しだろう。世の中にはこれに影響を受けた創作物が星の数ほど存在する。例えば、ジム・キャリー主演の『トゥルーマン・ショー』がそうだし、『マトリックス』もここに源流の一部がありそうだ。

ふと、公開中のとある映画にもこのエッセンスがかすかに香るのを見た。相変わらず映画館という洞窟に飲み込まれていく我々を、古代ギリシアの人々はなんと見るだろうか。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/09/15

マクガフィンなるもの

マクガフィンという専門用語がある。別に知らなくても映画を楽しむのになんら支障をきたすものではないが、でも知っておくとストーリーを構造的に見つめることができる。例えば、金塊探しをめぐって大冒険が巻き起こる物語ではその金塊がマクガフィンとなり、また謎の人物を探し求める映画では人物そのものがマクガフィンとなる。かくも物語や登場人物たちに行動の動機付けを与える要素をそう呼ぶのである。

この言葉を大々的に広めたのはヒッチコックだが、彼は「マクガフィンは無意味なものに限る」との考え方で、彼の映画ではいつも、書類だとか暗号だとか、別のものでも代用可能なシンプルさが重視された。そこに意味を与え過ぎると物語の道筋がかえって見えにくくなるからだ。

ここで、昨日取り上げたジャン=ピエール・メルヴィル監督作『サムライ』を引き合いに出してみよう。主人公が追う「謎の依頼人」とはいったい何者だったのか。その正体についてメルヴィルは当初「秘密機関の長」を想定していたらしいが、結果的に「私は彼が何者なのか知らないし、知りたくもない」というほど全く特徴のない人物となった。そして書籍「サムライ ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生」の中ではっきりこう述べている。「彼はヒッチコックが(「映画術」という本の中で)トリュフォーに語っている”マクガフィン”なんだよ」。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/09/10

バート・レイノルズとワンス・アポン・ア・タイム

‘69年当時のハリウッドの状況や、俳優たちの生き様に思いを馳せることで味わいが増していく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。たとえば、ディカプリオ演じる主人公には、バート・レイノルズを始めとする様々な実在俳優たちの姿が投影されていると言われる。となると、ブラピの役どころの一部には、レイノルズのスタントマンとして知られるハル・ニーダムあたりが降りているのだろうか。人生の低迷期を経験した二人だが、70年代になるとニーダムが監督を務めた『トランザム7000』で大ヒットを獲得。俳優とスタントマンの関係性でいうと、他にも『大脱走』のバイクシーンで名高いマックイーンとバド・イーキンズなどが有名だ。

タランティーノの『ワンス・アポン〜』に出演する予定だったレイノルズは、2018年に惜しくも急逝。また、一説によると、本作には若き日のレイノルズ役としてジェームズ・マースデンがキャスティングされていたものの、最終的に「スペシャル・サンクス」としてクレジットされるにとどまったという。出番がなくなった理由は定かではないが、こうすることでレイノルズの魂は出演者の一人としての域を超え、「主人公の一部」となって吸収、融合されていったように思えてならない。極めてタランティーノらしい追悼の仕方と言えるのかも。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/09/09

タランティーノとポランスキー

タランティーノの新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』については以前にも記事を書いた。その時、下調べする中で、ロマン・ポランスキーにまつわるちょっとしたエピソードを見つけたので、ご紹介しておきたい。

ご存知の通り、本作にはポランスキーと’69年時の妻シャロン・テートが関わってくるのだが、当初、タランティーノはポランスキーに一切の許諾を求めていなかった。一連の事件はもはや個人的体験を超えた「重要な歴史の一部」であり、それゆえ彼と連絡を取って詳細な言葉を交わす必要など全くないと考えていたからだ。

一方、ポランスキーはこの企画の噂をどこからか聞きつけ、ある日、共通の友人がタラに「どんな内容なの?」と電話をかけてきたのだとか。どうやらポランスキーは怒ってるとか、懸念しているとかでは全くなく、純粋に興味関心を寄せているらしい。この時、初めてタランティーノは事前に内容を伝えておいてもいいかなと感じるわけだが、しかし当のポランスキーは自由に渡航できない身。そこで先述の共通の友人がタラ邸に招かれ、代理として門外不出の脚本を読ませてもらったそう。もちろんそこで火種が生じるなんてことはなく、結果、何ら問題ないまま、企画を前に進めていくことができたという。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/09/04

第11回福岡インディペンデント映画祭 3日目

■いよいよ最終日。中洲川端から六本松まで走ろうかと思ったが、外へ出てみるとあいにくの雨。地下鉄で会場へと向かう。この日は日曜日ということもあり、会場の福岡市科学館内は目をキラキラと輝かせたお子さん方でいっぱいだった。もちろん彼らは映画祭を見に来たわけではなく、各種展示スペースや、プラネタリウムを兼ねたドームシアターへと吸い込まれていく。そんな流れに抗うように、私は今日もサイエンスホールを目指し、ここでひたすら映画を観る。

 

続きを読む "第11回福岡インディペンデント映画祭 3日目"

|

2019/08/27

ロケットマン

エルトン・ジョンの半生を描いた『ロケットマン』が公開中だ。もちろんこれ一本だけで十分に面白いことは間違いない。が、さらに深掘りしたいなら、ぜひ映画『リトル・ダンサー』やその舞台版「ビリー・エリオット ザ・ミュージカル」と併せて楽しみたいところ。それはなぜか?「ザ・ミュージカル」のDVD収録の特典映像によると、エルトン・ジョンは『リトル・ダンサー』が初披露されたカンヌでたまたまこれを鑑賞し、自身の幼少期(特に父親との関係性など)と重なる部分が多かったこともあり、号泣してしまったのだとか。この幸運な出会いをきっかけに製作陣との交流が始まり、本作は5年後、エルトン・ジョン作曲の珠玉のナンバーに満ちた「ザ・ミュージカル」へと進化を遂げることに————。で、『ロケットマン』は監督こそ違うものの、脚本を担うのは『リトル・ダンサー』を手がけ、エルトンと「ザ・ミュージカル」で密にコラボしたリー・ホール。かくも気心知れた間柄だけに、エルトンが大感動した「重なる部分」も、極めて丁寧に描かれていて観客の涙を誘う。そして、映画版でビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベルも重要な役で好演。これらの背景を知っておくと、ちょっとした鑑賞の助けになるかも。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

2019/08/26

恐怖を克服するのに有効な方法

私は有名監督の「まだ何者でもなかった頃の話」が大好きなのだが、こと「アクターズ・スタジオ・インタビュー」で聞かれたスピルバーグの少年時代にまつわる話に惹きつけられた。一人の学生が「あなたが誰もが知る“スティーヴン・スピルバーグ”になる前、ご自身の中に表現者としての潜在的な可能性を感じてましたか?」と尋ねて、スピルバーグはすかさずこう返す。

「そんなものあるわけない。ゼロだよ、ゼロ!」。

まだ何者でもなかった頃、彼は「怖いと感じるもの」をたくさん抱えた子供だったという。と同時に、その恐怖をどうにかして克服したかった。ではどうすれば? 導き出した答えは「心の内側の恐怖を取り出して具現化すること」。そうやって真正面から正体を見極めることで恐怖は克服できる。だが彼の場合、それがちょっと行き過ぎてしまったようだ。次第に「僕の中のモンスター(スピルバーグ談)」な部分が顔を出し、怖いと感じたものを他人に突きつけて怖がらせようと色々やりだすーーーーつまり、その延長線上に『激突!』や『JAWS』のような傑作群があることは明らかだ。「僕にとってそれは一種のセラピーのようなもの」。自分の体験を記憶の中に閉じ込めることなく、皆で共有する。ここにもスピルバーグ作品を紐解く上での重要なポイントが隠されている。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

500文字コラム 50音順タイトル awards BOOKS memo NEWS TOP trailer WORDS 【Hero】 【my French Film Festival 2011】 【おいしい映画】 【お年寄りが元気!】 【アート×映画】 【クラシック音楽はお好き?】 【ドキュメンタリー万歳】 【メモ】英国王のスピーチ 【レビュー】 【劇場未公開作】 【劇薬!】 【地域:TOKYO発】 【地域:アジア】 【地域:中東発】 【地域:仏国発】 【地域:北欧発】 【地域:南米発】 【地域:英国発】 【学園という名の社会】 【宇宙で逢いましょう】 【家族でがんばる!】 【文芸】 【新感覚アクション】 【映画×スポーツ】 【映画×偉人】 【生きるためのファンタジー】 【監督:クリント・イーストウッド】 【監督:ジョー・ライト】 【監督:ミシェル・ゴンドリー】 【紛争】 【素晴らしき、黙示録の世界】 【脚本:ピーター・モーガン】 【音楽×映画】 アウシュヴィッツ訪問 イベント、取材 クエンティン・タランティーノ ジョゼフ・ゴードン=レヴィット スティーヴン・キング スティーヴン・スピルバーグ ヒッチコックを観る メディア執筆原稿 一言レビュー 今年のベスト 今年のベスト(2013) 今年のベスト(2006) 今年のベスト(2007) 今年のベスト(2008) 今年のベスト(2009) 今年のベスト(2010) 今年のベスト(2011) 今年のベスト(2012) 全米BOX OFFICE 再起復活ベン・アフレック 旅の記録 映画業界