2019/10/10

SFハードアクション映画「アップグレード」

今や人間と自動音声ガイドやAIがバディを組む映画も珍しくは無くなった。それらの描写が一般化するまでには、「アイアンマン」や「ナイトライダー」や「2001年 宇宙の旅」など偉大な先人たちがいたことは言うまでもなく、最近でもインディペンデント映画ながら卓越した未来描写で自動運転AIと人間との関係性を描いた「センターライン」が注目を集めたのは記憶に新しいところ。で、こういったジャンルの最新版として是非押さえておきたいのが、「ソウ」シリーズで知られるリー・ワネルの監督、脚本作『アップグレード』だ。製作を担うのは低予算ホラーの雄、ジェイソン・ブラム。

舐めてかかると心底はまってしまう逸品である。ミニマルな未来描写にも心酔させられるのだが、何者かの襲撃で妻を殺され、自らも重傷を負った主人公がAIチップを埋め込むことで超人へと生まれ変わるあたりから、一気に面白さが火を吹く。ハードタッチのリベンジ・アクションであり、脳内ナビゲートするAIと主人公が会話しながら真相を追う相棒モノでもある。何と言ってもコンパクトながらしっかりとまとまったプロットが秀逸で、この先どうなっていくのか微塵も掴ませない。いやはや思いがけない拾いものだった。

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2019/10/01

ジョーカー

DCコミックスで最も高い知名度を誇る怪人ジョーカー。その誕生物語をリアルに描いた本作は、ヴェネツィア国際映画祭で最高賞を受賞するなど、世界同時公開を前に早くも高評価の渦が巻き起こっている。僕もつい先日、試写してきたばかりなのだが、その衝撃のほどは呆然とするほど凄まじかった。

福祉の切り詰め、格差の拡大、公共サービスの停止などによって息苦しさを増すゴッサム・シティ。その社会の底辺でピエロを生業として生きる主人公アーサーは、幾つもの安定剤を服用し、さらにふとした拍子で笑いが止まらなくなるという症状も抱えている。社会的に追い詰められ、絶望の淵に立った彼はやがて一線を越えてしまうのだが・・・。

まずもって、ホアキン・フェニックスの怪演には震撼するばかり。出演決定時にすでに高まっていたハードルを、やすやすと越えたのではないか。そして本作の不気味さに暗黒の輝きを添える要素がもう一つ。それは『キング・オブ・コメディ』や『タクシー・ドライバー』の影響が見え隠れするという点だ。しかも、コメディアン志望のアーサーが視聴するTVトークショーの司会者をデ・ニーロが演じるという凝りよう。時代は繰り返すというが、本作はあの頃のデ・ニーロがスクリーンで体現していた狂気、精神的傷跡が形を変えて蘇ったかのようでもある。

『ハングオーバー』シリーズのトッド・フィリップスが切り開いたまさかの境地。ジョーカーの映画化としては危険レベルの水域に達したと言えるほどの桁違いの完成度だ。ただ、本作は精神的にキリキリとくる。体調的に余裕がある時に見た方が無難だろうし、本能的に「嫌い」と答える人も出てくるはず。どう受け止めるかはひとえにあなた次第だし、他人の意見に振り回される必要は全くない。

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2019/09/18

「アス/Us」

ジョーダン・ピール監督の最新作『アス/Us』について書きました。

戦慄ホラーの中に現代社会への視点を潜ませた、ジョーダン・ピールの監督術/CINEMORE

Handsacrossamerica

Us

夜な夜な、自分にそっくりな姿のモンスターたちがやってくる・・・というホラーなんだけれど、映画が終わって「あれは一体何だったのか?」と考えると、思いもしなかったいろんな気づきや発見がこみ上げてきます。

ここに書いてることが正解か間違いかではなくて、いろんなことを考えさせられる、ってところがこの映画のポイントなんだと思います。

ネタバレありなので、鑑賞済みの方にしかお勧めできませんが、気になった方はお読みいただければ幸いです。

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2019/09/14

「サムライ」(1967)

アラン・ドロン主演の名作『サムライ』について書かせて頂きました。

Lesamourai

フレンチ・フィルム・ノワールの傑作が描く孤高の生き様/CINEMORE

本作が公開されたのは僕が生まれる10年前なので、当時の日本人がどんな面持ちでこれを受け止めたのか、その確かな情景は想像するしかないのですが、今回はあくまで自分史に忠実に、自身がこの映画に触れるきっかけとなったジム・ジャームッシュの『ゴースト・ドッグ』という映画を導入部に置きながら綴ってみることにしました。お前がメルヴィルを語るなんて100年早い!と言われそうですが、もう恥も外聞もない年頃なので、生きているうちにできるだけ多くの名作世界へ潜り込み、できるだけわかりやすい言葉でお伝えしてければと思います。

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2019/09/10

バート・レイノルズとワンス・アポン・ア・タイム

‘69年当時のハリウッドの状況や、俳優たちの生き様に思いを馳せることで味わいが増していく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。たとえば、ディカプリオ演じる主人公には、バート・レイノルズを始めとする様々な実在俳優たちの姿が投影されていると言われる。となると、ブラピの役どころの一部には、レイノルズのスタントマンとして知られるハル・ニーダムあたりが降りているのだろうか。人生の低迷期を経験した二人だが、70年代になるとニーダムが監督を務めた『トランザム7000』で大ヒットを獲得。俳優とスタントマンの関係性でいうと、他にも『大脱走』のバイクシーンで名高いマックイーンとバド・イーキンズなどが有名だ。

タランティーノの『ワンス・アポン〜』に出演する予定だったレイノルズは、2018年に惜しくも急逝。また、一説によると、本作には若き日のレイノルズ役としてジェームズ・マースデンがキャスティングされていたものの、最終的に「スペシャル・サンクス」としてクレジットされるにとどまったという。出番がなくなった理由は定かではないが、こうすることでレイノルズの魂は出演者の一人としての域を超え、「主人公の一部」となって吸収、融合されていったように思えてならない。極めてタランティーノらしい追悼の仕方と言えるのかも。

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2019/09/09

タランティーノとポランスキー

タランティーノの新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』については以前にも記事を書いた。その時、下調べする中で、ロマン・ポランスキーにまつわるちょっとしたエピソードを見つけたので、ご紹介しておきたい。

ご存知の通り、本作にはポランスキーと’69年時の妻シャロン・テートが関わってくるのだが、当初、タランティーノはポランスキーに一切の許諾を求めていなかった。一連の事件はもはや個人的体験を超えた「重要な歴史の一部」であり、それゆえ彼と連絡を取って詳細な言葉を交わす必要など全くないと考えていたからだ。

一方、ポランスキーはこの企画の噂をどこからか聞きつけ、ある日、共通の友人がタラに「どんな内容なの?」と電話をかけてきたのだとか。どうやらポランスキーは怒ってるとか、懸念しているとかでは全くなく、純粋に興味関心を寄せているらしい。この時、初めてタランティーノは事前に内容を伝えておいてもいいかなと感じるわけだが、しかし当のポランスキーは自由に渡航できない身。そこで先述の共通の友人がタラ邸に招かれ、代理として門外不出の脚本を読ませてもらったそう。もちろんそこで火種が生じるなんてことはなく、結果、何ら問題ないまま、企画を前に進めていくことができたという。

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2019/09/04

アモーレス・ペロス

メキシコ出身の名匠アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが2000年に発表した長編デビュー作『アモーレス・ペロス』について書きました。

Amoresperros

イニャリトゥが亡き息子に捧げた喪失と再生の物語/CINEMORE

彼の作品は創る側が激しく魂を削り、観る側もまた魂を削る。そうやって少しずつ両者が共鳴していくひとときーーーー。東京国際映画祭で出待ちしたことのある私にとっては、とても忘れがたい作品。いろいろ調べながら、様々な思いが隠されていたことを知り、理解が深まりました。ご興味ある方は是非ご一読いただければ幸いです。

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2019/07/11

ヒッチコック『鳥』(1963)

アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作といっても過言ではない『鳥』について書きました。

ヒッチコックの『鳥』が映画史に輝く傑作である3つの理由/CINEMORE

もしかしたら有名すぎて逆に未見の方も多いのではないでしょうか。今なお古臭さなど微塵も感じさせず、観る者を強烈な磁力でひきつけ、さらには阿鼻叫喚の混沌へと叩きおとす、怪作。

ヒッチコック作品を観るときはいつも「定本 映画術」という教科書的な書籍を携えているのですが、今回も多くの舞台裏のエピソード、そして巨匠ならではのこだわりを学ぶことができました。ヒッチコックについて書くのはこれで5作品目ですが、本当に勉強になります。このペースだと全作品を鑑賞し終えるまでにすっかり年老いてしまいそうなので、時間があればこちらのブログでも取り上げてまいりたいと思います。

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2019/06/05

イングリッシュ・ペイシェント

『イングリッシュ・ペイシェント』と言えば、1997年のアカデミー賞授賞式で、主要部門を含む9カテゴリーでオスカー受賞を果たした作品。公開当時の私は大学生でしたが、その頃はアクション、ヒューマンドラマ、アート系の作品の方にばかり目が向き、ラブロマンスは後回し。厳密に言うと本作はラブロマンスというよりもヒューマンドラマ系の作品ではあるものの、それでも学生身分の自分にその良さが理解出来るとはこれっぽっちも思わなかった。そのため長年「手付かず」のまま、熟成蔵に入れたきり忘れていたことを告白しておきます。

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そして40代に突入した今、ようやく潮が満ちたかのように、この映画が見たくてたまらなくなりました。実はアンソニー・ミンゲラが本作を監督したのも同じくらいの年齢の頃だったそうで、つまるところ本作は「40代以上」が鑑賞の目安となるお年頃なのかもしれません。かくして最高の食べ頃を待ち続けてきただけあり、ようやく相見えることができたこの映画には心底感動しました。そんな『イングリッシュ・ペイシェント』について書いています。

あのレジェンド俳優が出演するはずだった!?オスカー受賞作『イングリッシュ・ペイシェント』をめぐる幻のキャスティング/CINEMORE

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2019/03/06

スパイダーマン:スパイダーバース

『スパイダーマン:スパイダーバース』のレビューを執筆しております。気になった方は是非ご覧ください。

祝オスカー受賞!ヒーロー映画の常識を覆す、興奮、陶酔、驚愕の大傑作/映画.com

今年のアカデミー賞。「作品部門」のオスカーを獲ったのは『グリーン・ブック』でしたが、一方、日本からは細田守監督の『未来のミライ』がノミネート入りして注目された「長編アニメーション部門」を制したのは、『スパイダーマン:スパイダーバース』でした。ディズニー/ピクサー以外の作品がこの部門の頂点に立つのは実に久々なのだそうです。試しに遡ってみると・・・

2018年 スパイダーマン:スパイダーバース
2017年 リメンバー・ミー
2016年 ズートピア
2015年 インサイド・ヘッド
2014年 ベイマックス
2013年 アナと雪の女王
2012年 メリダとおそろしの森
2011年 ランゴ(←ディズニー/ピクサー以外) 

こうして並んでいる作品群を見ると、子供から大人まで様々な世代が楽しめる作品ばかりだと思います。でも『スパイダーバース』は、むしろ大人たちの方が歓喜してスクリーンに釘付けになってしまうような、とにかく描き方と世界観がとてつもなくユニークな作品でした。

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