2018/09/14

福岡インディペンデント映画祭

福岡アジア美術館で開催された「福岡インディペンデント映画祭」の上映作を鑑賞すべく、福岡に3日間お邪魔しておりました。さすが157本もの出品作の中から選び抜かれただけあり、鑑賞した作品は秀作揃い。作家性のスパークする様を身体全体で味わせていただきました。

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・グランプリ受賞の『センターライン』は、今から10年後の未来、AIが引き起こした自動車事故をめぐる捜査&法廷モノ。最新テクノロジーを題材に取りながらも、あえてその筆致は伝統的な刑事ドラマのノリを崩さず、反比例するかに見えたその相性を見事に調和させていくところに巧さが光る一品でした。何よりもコンセプトの強度が高く、すぐにでもTVドラマなどでシリーズ化されてもおかしくないように思えました。

・俳優賞や優秀作品賞を受賞した『カランコエの花』は、現在、渋谷のアップリンクでも上映中。今回の映画祭での2度の上映はどちらもお客さんが多く詰め掛け、ラストシーンでは多くの人が目頭を熱くさせていました。吹奏楽部の演奏でゆっくりと静かに空気を醸成していく幕開けや、教室での生徒たちの有機的な演技の構築、そこに突きつけられるLGBTというテーマ性の組み込み方が素晴らしい。セリフや表情が鑑賞後も次々と思い起こされ、胸の内側でじわじわと余韻が広がっていく名作でした。

・一方、100分部門最優秀作品賞受賞の『ハッピーアイランド』は、人生に何の目標もなくただ無造作に生きる青年が、知人の紹介で福島の農家で人生を見つめ直す物語。決して綺麗事だけで終わらない。かといって希望や情熱も失わない。日々の暮らしの中で主人公の目が徐々に変わる。生き様が変わる。そうやって主人公の中で何かが大きく動き出していく。その通過儀礼にも似たダイナミズムが観る者の心を大きく震わせます。今自分(というより、日本人みんな)が知りたかったこと、知らなければならなかったことが、巧みな人間描写と熱量で描き尽くされた秀作。終演後、ずっとこの感動に浸っていたくて、川端商店街を端から端まで歩き続けてしまったほど。

・19歳の監督が撮ったという『FIGHTINGCAMERAMAN』という10分の作品が壮絶でした。ここには誰もが経験したことのある表現の「初期衝動」が刻印されています。初めてカメラを手にした高校生が興奮のあまり「俺は最高のカメラマンになる!」と絶叫。でも次の瞬間には、しがない大人になった彼が、よりにもよって盗撮などに明け暮れる最悪の日々が描き出される。そんな中、カメラはついに「もう我慢ならない!」とばかりに持ち主(主人公)に反旗を翻して襲いかかる・・・。終始、なんだこりゃ!? 電流を帯びたようなハイ・ボルテージ。もはや発狂にも等しいほどの創造性への苦しみと喜び。何やら意味もわからず、ただただ圧倒されるばかりでした。同映画祭では「20分部門」の最優秀作品賞を受賞しています。

・さらにもう一本、『放蕩息子』 という、役者を目指す青年と故郷の家族の関係性を描いたドキュメンタリー映画が上映されたのですが、この作品を見ながら、なんだか胸をかきむしりたいほどに、青ざめてしまいました。なぜか?それは主人公の青年が、驚くほど自分自身と重なって見えたから(多少、甘ったれたところも含めて)。上映日、会場に来られていた主人公のご両親の佇まいも、それからご家庭の雰囲気も、なんだか自分が育ってきた環境と似ていました。もしかすると昭和50年代生まれで、今なお「あんた、まだ夢を追いかけてるの?」と言われ続けている人の多くは、この映画に無条件でゾワゾワさせられるのかもしれません。その意味で、本作には少なからず「時代を捉える」という側面があるーーー。今、映画祭サイトに掲載してある監督のコメントを読むと、「私と彼は似た者同士」「ずっと『彼は私だ』と思いながら撮影をした」とありました。そこにさらに「観客」というもう一つのファクターが加わることで、上映中、「He」は束の間の「We」となり、またそれぞれの「I」へと還元されていくことになるのでしょう。胸かきむしって青ざめながら観たけれど、(だからこそ)どこか忘れがたい。それが一人の同世代の観客としての率直な感想でした。

他にも『戻る場所はもうない』、『予定は未定』、『デッドコップ』、『老ナルキソス』、『おんがえし』、『國の狗』、『直哉の結婚前夜』、『RICE BALL』など、いずれの作品も独創的で楽しませてもらいました(一作、一作の感想を書くことができず、すみません!また見逃してしまった作品も多く、悔やまれます)。すべての作り手や演者さん、映画祭のスタッフの皆さんに心から感謝したいです。

また、上映の合間には、前から一度は入ってみたかったレトロな雰囲気溢れる「大洋映画劇場」(映画祭の会場から5分ほど)にて朝十時から『プラトーン』を鑑賞したりも。また、天神のイムズのアートギャラリーで開催中の「バスキアとNYのアーティストたち」展も興味深く拝見しました。

私にとって約20年ぶりの博多、天神エリアでしたが、最高に充実したひと時を過ごさせていただきました。9月14日からはアジアフォーカス・福岡国際映画祭が始まるなど、9月の福岡は映画が充実しています。できれば一ヶ月くらいこの地に住み続けたいものだと夢見がちなことを思ってしまいました。また近いうちに訪れたいです。

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2017/04/21

レントン、シック・ボーイ、スパッド、ベグビーらのホームタウンへ

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エディンバラの中心部からしばらく歩くと、『トレインスポッティング』の主人公、レントン、シック・ボーイ、スパッド、ベグビーたちのホームタウンが見えてきます。同じエディンバラ市内でもいささか雰囲気が異なるのは、港がすぐ近くに迫っているせいでしょうか。上空にはカモメの鳴き声が絶えず聞かれ、道端では年配の方が(カメラを構える私に対して)ちょっと怪訝そうなそぶりを見せながら横切っていきます。リース(Leith)には、ありふれているけれど忘れがたい街の記憶が刻まれていました。

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2017/04/16

Trainspotting

エディンバラを訪れた際、『トレインスポッティング』のロケーションとして聖地化したこの場所に足を運んでみました。

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20年前、この通りを激走していた彼らに思いを馳せつつ。

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2016/04/05

渡英していました

3月の後半、所用のため渡英しておりました。

出発直前にベルギーでの惨劇があったものですから、到着する頃にはかなりの警戒態勢を予想して内心不安が募っていたのも事実。ですが、いざ着いてみるとピリピリしたムードを感じさせない穏やかな空気が流れていました。しかしこれは何も警戒を怠っているわけではなく、ピリピリしたムードを感じさせない配慮が働いていたのだと思います。現に街中にはいつもと変わらず多くの防犯カメラが作動しており、警察官や係員の持つ無線機からは終始、カメラの監視側と連動した事細かな連絡が飛び込んでくるのが聞こえましたからーー。

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夜のテムズ川沿いを歩くと、夜景が美しすぎて、どこまででも歩いてしまう。引き返すポイントを完全に見失ってしまいます。

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テムズ川にかかる橋の上に位置するBlackfriars駅からの眺め。遠くにうっすらとタワーブリッジが見えるでしょうか。右手の天を衝く三角すいのような建物はShardと呼ばれる高層建築。煙突がトレードマークの建物は発電所をリノベーションしたテート・モダン(現代美術館)。

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英国ではおなじみの寿司チェーン「yo! sushi」。キャッチフレーズが「ここは〜」ではなく「これは〜」なところに、アリスの不思議な世界へ迷い込んだようなパラレルなジャポニズムを感じます。

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テムズ川沿いに位置するこの建物はどこでしょう?と質問するのも野暮ですね。ジェームズ・ボンドの勤務先としてあまりに有名となりました。映画の中では何度も破壊されていますが、健在です。

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絢爛豪華な国会議事堂は、様々な偉人たちの彫像で囲まれています。個人的に最も良い位置を確保しているのがこの勇壮に馬に跨り剣を振り上げる王。獅子心王とも呼ばれたリチャード一世です。

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ロンドンでは必ずBFIに足を運ぶことにしています。今回はそこで行われたBBC製作の新作ドラマ「The Hollow Crown」の第2シリーズのプレビュー上映も鑑賞。シェイスクスピアによる戯曲をもとにしたこのシリーズですが、ヘンリ−6世統治下を舞台にした今回のシリーズでは薔薇戦争が中心に描かれ、後半ではリチャード3世をベネディクト・カンバーバッチが怪演。この日はヘンリ−6世役のトム・スターリッジと、グロスター公役のヒュー・ボネヴィル(「ダウントン・アビー」や「パディントンでも有名ですよね」)を招いてのQ&Aも実施。

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2012/08/01

【LONDON】タヴィストックの思い出

10年前に新調したパスポートが遂に期限切れを迎えた。ということは、私が大英博物館近くのタヴィストック広場でマハトマ・ガンジーの座像と初めて出逢った時分からもうざっと10年近くの歳月が流れたこととなる。

それ以来、ロンドンを訪れるごとに、ハイドパークではなく、リージェント・パークでもなく、なぜかこのタヴィストック広場に通うようになった。そこは不思議な磁力でもって人を引き付ける、心休まるのどかな広場なのだった。そして今回訪れた時にもガンジーは相変わらずその場に鎮座していた。

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なぜ私がタヴィストック広場に惹かれるのか。それは10年前、心細くブルームスベリー地区を歩いていたときに見つけたこのガンジー像が同じアジア人としてとても心強く思えたというのもあるのかもしれない。そしてこの広場内には広島の原爆犠牲者を追悼して植えられた桜の木や戦争時の徴兵忌避者を記念する碑や作家ヴァージニア・ウルフの記念碑まである。なにか様々なレベルの要素が入り乱れ一貫性に欠ける気もするが、それでもこの広場には穏やかなる平和への希求がある。それらが放つ磁力といったものは実際にこの場を訪れてベンチに腰をおろしてみなければわからないだろう。

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すぐ近くにはイギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの住居跡を示すブループレートが。タヴィストック広場にはそのような文豪たちの偉業をたたえる意味合いも込められているという。

ところが私はつい最近になって初めて、このタヴィストック広場に関する思いがけない事実を知ることとなる。それはロンドン市民ならば誰もが決して忘れることのない日付「2005年7月7日」に関することだった。

その日、通勤客が行き交うこのエリアにて複数の自爆テロが発生した。犠牲者56名。中でもこのタヴィストック広場の真横ではダブルデッカーが爆破され乗車していた13名が命を落としていた。それは非暴力、非服従を訴え続けてきたガンジーの鎮座するまさに向かい側で起こった出来事だった。私にはテロリストが寡黙に瞑想を続けるガンジー像にこの世の絶望を見せつけたかったのではなかったのかと感じられてやまない。

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よりによってロンドン市内で最も平和への希求が捧げられてきた場所でこのような悲劇が巻き起こってしまう運命には言葉を失ってしまう。そしてそれらの事件の舞台であったとは露も知らない自分が、事件前も事件後も相変わらずこの広場に惹かれ続けて幾度も足を運んでいる事実にも不思議な運命性を感じた。

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訪れたのは7月21日。すでに7日の追悼日からは2週間が経過していたが、いまだ多くの花が捧げられていたのですぐにその位置を特定することができた。通行人は誰もが必ず足を止め、中央にあるプレートを見つめ、去って行く。

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In memory of those who were killed in the bomb attack on a route 30 bus near this spot on 7th July 2005. London will not forget them and all those who suffered that day.

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目の前でどんな悲劇が巻き起ころうとも、そこにじっと座り続けることを余儀なくされたガンジー像。タヴィストック広場には益々もって穏やかな時間が流れ、昼食時には私と同じようにこの場所に惹かれた多くの人がベンチで手作りサンドウィッチを大事そうに包みから開けて懸命に頬張っていた。中東系の浅黒い肌のおばあさんはこれが昼食後の楽しみなのだと言わんばかりに、ビニル袋から目一杯に詰め込んだパン屑を掴みだしては一定間隔でばら撒き、何十羽もの鳩たちによる祝福を浴びていた。この光景だけを見つめていると、ほんの7年前に起こったテロの悲劇など存在しなかったかのようだった。

我々はそうやって穏やかな日々を地道に積み重ねることによってのみ、平和への希求の成果を計り知ることができるのかもしれない。

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2012/07/28

【LONDON】

相変わらずの曇天模様ではありますが、トラファルガー広場からピカデリー・サーカスに抜ける通りには各国の国旗がはためき、歓迎ムードが高まっていました。

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2012/07/24

フロイト博物館 Freud Museum London

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ロンドンはフィンチェリー・ロードの閑静な住宅街にあるフロイト博物館を訪ねました。かの有名な精神分析学者ジグムンド・フロイトがナチスドイツからの亡命後、晩年を過ごした邸宅です。

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2012/07/21

英国でもダークナイトが初日を迎えました

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クリストファー・ノーランのお膝元のイギリスでも『ダークナイト・ライジング』が封切られました。私も行きつけのピクチャーハウス・シネマでの初回上映(午後13時)のチケットを握り締め、いざ、出陣。

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2012/07/20

ブリティッシュ・フィルム・インスティテュート

英国映画の促進から古い映画のアーカイブ、そしてシネマテークに至るまでを司るブリティッシュ・フィルム・インスティテュート(BFI)。テムズ河沿いのロンドン・アイからほど近いところにあるこの場所では、ロンドンの映画愛好家や研究家のために新作と旧作、古典を織り交ぜた様々なプログラムを上映しています。例えばこの日などは新藤兼人の作品なども上映されていました。劇場のお許しをいただいて、劇場内の写真を一枚。

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2012/07/18

イギリス滞在中

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