2018/12/20

長崎へ 七日目〜旅の終わり、西坂の丘へ〜

昨日訪れた大浦天主堂は正式には「日本二十六聖殉教者天主堂」といい、豊臣秀吉の命令によって西坂の丘で処刑された二十六聖人へ捧げられたものなのだとか。しかも教会自体が西坂の方角に向かって建てられているという。

ならば最後に、大浦天主堂が150年間も思いを捧げ続ける「二十六聖人」が殉教した地へと行ってみるしかあるまい。

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長崎へ 六日目〜国宝、世界遺産の大浦天主堂〜

結果的に私は、1865年3月17日に起こった「信徒発見」という出来事の流れを辿るかのように、浦上天主堂のある地域から大浦天主堂までの道のりを移動することとなった。

幕末のこの日、浦上の農民達十数名が神父の前に歩み出て、自分たちが禁教時代もキリシタンとしてずっと信仰を守り通してきたことを告白した。いわゆる潜伏期の終焉であり、この出来事は宗教上の奇跡としても語り継がれている。思えば、私が遠藤周作の「沈黙」を読んだとき、マーティン・スコセッシ監督による映画版を鑑賞した時に、ラストシーンの余韻に浸りながらふと胸をよぎったのも、200年の時を経てカトリック聖職者と日本の信者とが再会を果たすこの場面だった。言うなれば「信徒発見」は、あらゆる潜伏期の物語のエピローグと言えるのかもしれない。

当時の方々にとってみれば徒歩にて一日がかりの巡礼だったろうが、私は誠にもって恐縮ながら、路面電車でほんの20分程度の旅で事足りた。

大浦のあたりも幼少期から何度となく訪れたことのある場所だが、今の私の見てくれといえば地元の人とはかけ離れた観光客である。なにしろ首からカメラをかけ、背中には今時珍しいほどの大きなリュックを背負っている。あげくのはてに、時々、港のほうからボウッ!と聴こえてくる船の汽笛にビクッとしては、何かが起こったのではないかと付近をキョロキョロと見渡す始末である。

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2018/12/19

長崎へ 五日目〜長崎で迎えた朝。はじめてのミサ体験〜

朝5時半に起きれるかどうか。それが問題だったはずだが、何の事はない。夜中、パソコン広げて原稿書きの仕事をしていたら、いつの間にか5時半を知らせるアンジェラスの鐘が鳴った。その時間から浦上天主堂には各方面から信者さんたちが歩いてやってこられる。朝のミサの始まりでである。私は5時50分の集合時間よりも10分も早くとロビー到着するという優等生ぶりを発揮。結局、その時間までに降りてこられた方は僕を含めて3人だった。

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長崎へ 四日目〜真っ暗闇の平戸で大手を振って歩く〜

4日目の朝は平戸からスタート。宿泊先を朝6時半に出立すると、あたりは案の定、まだ真っ暗闇。例のごとく手をぶんぶん振りながら横ギリギリを走り抜けて行く自動車に轢き殺されないように必死のアピールを繰り返して平戸口桟橋のバス停を目指した。そこから僕の生まれた年に完成した平戸大橋を越えて、中心街の平戸桟橋まで15分。始発バスは朝早くから登校する高校生が複数名乗っていた。彼らは学校前のバス停でみんな降りていってしまったが、その際の降車のやり方が実に興味深い。みんなして後ろの方を振り返り、最後列から順々に降りていくのだ。きっとこの学校ではバスの乗り方としてこのように指導されているに違いない。

ただし、このとき、僕自身が最後尾に座っていたことが事を複雑にした。学生達はリュックを抱えた僕の方をじっと見つめ、降りるのか降りないのかを2、3秒見定め、「ああこの人、学校関係者ではないんだな」という暗黙の判断を下した上で、降車を開始したようだった。彼らにとってみれば、僕は担任教師と同じかそれより年上となるのだろうか。ほんの数秒の間ではあったものの、僕と彼らとの間で、バーチャルな先生と生徒の関係性が僅かばかり香ったのが非常に興味深く感じられたのだった。


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2018/12/18

長崎へ 三日目〜親愛なるウシたちとの出逢いと別れ〜

野崎島から無事帰ってきて、ホッとした心境で迎えた3日目。

小値賀島で宿泊した「島宿御縁」があまりに気持ちのいい空間だったので、ここは天国なのかというくらいにゆったりとくつろいでしまいました。部屋の窓からはすぐそこに海が見え、ふとんはフカフカで、食事は美味しいし、何よりも個室にトイレとお風呂が付いているのが嬉しいところ。通常の島宿ではあまり得られない充実した空間が広がっていました。

また、ご主人もとてもエネルギッシュかつ情熱に溢れた方。元々は外国人の旅行者をつれて日本国中を案内して回るツアー・コンダクターとして活躍されていたのだそう。その後、実家のある小値賀島へ戻り、これまでのように自らいろんな場所に出向くのではなく、この小値賀の地こそを「世界中から人の集まる場所」にすべく日々構想を巡らされているのだそうです。

生まれてからずっと小値賀でがんばっている方もおられる一方、UターンやIターンで小値賀で暮らし始めた若い世代も多いとのこと。外の世界で何らかのプロフェッショナルの腕を磨かれ、それを用いてこれまでになかった様々な新風が吹いている模様。「島宿御縁」さんが提供する居心地のよい空間もそうですが、ほかにも島のご自慢の特産物を洗練されたデザインのパッケージングと打ち出し方で全国へと届ける「しまうま商会」さん、そして今回、通りかかったときにはすでに完売御礼と張り出されていた「こじこじぱん」さん、家業の活版印刷を用いておもしろい取り組みを続ける「OJIKAPPAN」さんなど、気になるお店は数知れず。都会と比べてアイディアをどんどん具現化していくことのできる島という空間は、ある意味、ひとつの大きな可能性のかたまりなのかもしれません。

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2018/12/13

長崎へ 二日目〜五島の無人島に建つ教会〜

博多からのフェリー太古が五島列島の小値賀島に到着したのは午前4時40分頃。巨大な船体が走り去った後の周囲は、どこまでが陸でどこからが海なのか分からないほど暗い。ターミナルの仮眠室で朝まで過ごせるという。利用者は僕一人。ここでターミナル内にある「おぢかアイランドツーリズム」が開くのを待つ。

今回、小値賀島を訪れるきっかけとなったのは、ここからほど近い野崎島にある旧野首教会の存在だった。


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長崎へ 一日目〜思いっきり遠回りして故郷へ帰る〜

朝から大きなリュックを抱えて満員電車で羽田へ向かい、空路で福岡へ。単なる帰郷ならそのまま長崎入りすれば良かったわけだが、たちどまり、迂回し、大きく遠回りして寄り道ばかりしているのは何も今にはじまったことではない。そんな自分の性格と格闘するかのように、福岡では西鉄福岡駅から1時間ほどかけて大堰というローカル駅へ。あいにくの雨。列車を降りると横殴りの風雨に翻弄されて、慣れない一本道をトボトボと歩く。走り抜けるトラックに水をぶっかけられながらも一向に心が折れなかったのは、このだだっぴろい平野の向こうにずっと双塔の建物が見え続けていたから。まるで北極星に導かれるたびびとのように、歴史ある教会建築、今村天主堂を目指した。

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このあたりは禁教時代にもひそかにキリスト教が守り抜かれ、今から150年前に大浦天主堂のプティジャン神父とその信徒達によって「信徒発見」された地区だという。その後、明治の終わりにレンガ作りの天主堂が着工され、大正2年に完成した。設計は教会建築で名高い鉄川与助。

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近くから見ると本当に大きな教会であることがわかる。中に入れて頂くと、はじめはその仄暗さになれるまで時間がかかったものの、目が慣れると様々な細部が浮かび上がってきた。大天使ミカエル像。ぐるりと取り囲むキリストの受難を物語った絵画の連作。建設当時から変わらぬままという木造の床は時を経てますます黒光りしており、ふと触れた木の柱も一本一本が力強く構造を支えている。ステンドグラスからの光が、外が大雨であることをすっかり忘れさせる。ご案内いただいた方の、この教会を単に文化財として受け継ぐだけでなく、その中身の部分(信仰)も伝えていかなければという言葉が印象的だった。

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帰り道には、目指すべき星などなく、雨に打たれっぱなしで体力的にも疲労困憊。その後、天神に戻ってからはKBCシネマでチリー・ゴンザレスのドキュメンタリー「黙ってピアノを弾いてくれ」を鑑賞。そういえば今日、何も食べていなかったことに気づき、雨と寒さで思考停止に陥りながらも、なんとか9月に福岡インディペンデント映画祭で訪れた川端商店街にて、本日最初の食事にありつく。このエリアでの行動は慣れたものなので、途端に元気になり、3ヶ月ぶりの懐かしさをところどころ確認して回る。これからの2食分の食事や水分の調達なども。

博多港へ歩きで移動して、23時45分発の五島行きフェリー太古に乗り込む。「強風の影響でかなり揺れる」との情報。船員さんのアドバイス通り、船体の真ん中付近のエリアに横になり、出航前に酔い止めを服用。酔いは、視覚情報と身体の揺れとのズレから引き起こされることが多いらしく、出来るだけ目を閉じて過ごした。本当は熟睡したかったのだけれど、底から突き上げて引きずるような揺れで眠れなかった。そういえば、昨晩もギリギリまで仕事していて一睡もできなかったなと思い返す中、トイレからは船酔いされた方の苦しそうな声が絶え間なく響き続けていた。服用のおかげとはいえ、昔から身体の弱かった自分が、この船旅をなんとか乗り切ったことは大きい。

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2018/09/14

福岡インディペンデント映画祭

福岡アジア美術館で開催された「福岡インディペンデント映画祭」の上映作を鑑賞すべく、福岡に3日間お邪魔しておりました。さすが157本もの出品作の中から選び抜かれただけあり、鑑賞した作品は秀作揃い。作家性のスパークする様を身体全体で味わせていただきました。

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・グランプリ受賞の『センターライン』は、今から10年後の未来、AIが引き起こした自動車事故をめぐる捜査&法廷モノ。最新テクノロジーを題材に取りながらも、あえてその筆致は伝統的な刑事ドラマのノリを崩さず、反比例するかに見えたその相性を見事に調和させていくところに巧さが光る一品でした。何よりもコンセプトの強度が高く、すぐにでもTVドラマなどでシリーズ化されてもおかしくないように思えました。

・俳優賞や優秀作品賞を受賞した『カランコエの花』は、現在、渋谷のアップリンクでも上映中。今回の映画祭での2度の上映はどちらもお客さんが多く詰め掛け、ラストシーンでは多くの人が目頭を熱くさせていました。吹奏楽部の演奏でゆっくりと静かに空気を醸成していく幕開けや、教室での生徒たちの有機的な演技の構築、そこに突きつけられるLGBTというテーマ性の組み込み方が素晴らしい。セリフや表情が鑑賞後も次々と思い起こされ、胸の内側でじわじわと余韻が広がっていく名作でした。

・一方、100分部門最優秀作品賞受賞の『ハッピーアイランド』は、人生に何の目標もなくただ無造作に生きる青年が、知人の紹介で福島の農家で人生を見つめ直す物語。決して綺麗事だけで終わらない。かといって希望や情熱も失わない。日々の暮らしの中で主人公の目が徐々に変わる。生き様が変わる。そうやって主人公の中で何かが大きく動き出していく。その通過儀礼にも似たダイナミズムが観る者の心を大きく震わせます。今自分(というより、日本人みんな)が知りたかったこと、知らなければならなかったことが、巧みな人間描写と熱量で描き尽くされた秀作。終演後、ずっとこの感動に浸っていたくて、川端商店街を端から端まで歩き続けてしまったほど。

・19歳の監督が撮ったという『FIGHTINGCAMERAMAN』という10分の作品が壮絶でした。ここには誰もが経験したことのある表現の「初期衝動」が刻印されています。初めてカメラを手にした高校生が興奮のあまり「俺は最高のカメラマンになる!」と絶叫。でも次の瞬間には、しがない大人になった彼が、よりにもよって盗撮などに明け暮れる最悪の日々が描き出される。そんな中、カメラはついに「もう我慢ならない!」とばかりに持ち主(主人公)に反旗を翻して襲いかかる・・・。終始、なんだこりゃ!? 電流を帯びたようなハイ・ボルテージ。もはや発狂にも等しいほどの創造性への苦しみと喜び。何やら意味もわからず、ただただ圧倒されるばかりでした。同映画祭では「20分部門」の最優秀作品賞を受賞しています。

・さらにもう一本、『放蕩息子』 という、役者を目指す青年と故郷の家族の関係性を描いたドキュメンタリー映画が上映されたのですが、この作品を見ながら、なんだか胸をかきむしりたいほどに、青ざめてしまいました。なぜか?それは主人公の青年が、驚くほど自分自身と重なって見えたから(多少、甘ったれたところも含めて)。上映日、会場に来られていた主人公のご両親の佇まいも、それからご家庭の雰囲気も、なんだか自分が育ってきた環境と似ていました。もしかすると昭和50年代生まれで、今なお「あんた、まだ夢を追いかけてるの?」と言われ続けている人の多くは、この映画に無条件でゾワゾワさせられるのかもしれません。その意味で、本作には少なからず「時代を捉える」という側面があるーーー。今、映画祭サイトに掲載してある監督のコメントを読むと、「私と彼は似た者同士」「ずっと『彼は私だ』と思いながら撮影をした」とありました。そこにさらに「観客」というもう一つのファクターが加わることで、上映中、「He」は束の間の「We」となり、またそれぞれの「I」へと還元されていくことになるのでしょう。胸かきむしって青ざめながら観たけれど、(だからこそ)どこか忘れがたい。それが一人の同世代の観客としての率直な感想でした。

他にも『戻る場所はもうない』、『予定は未定』、『デッドコップ』、『老ナルキソス』、『おんがえし』、『國の狗』、『直哉の結婚前夜』、『RICE BALL』など、いずれの作品も独創的で楽しませてもらいました(一作、一作の感想を書くことができず、すみません!また見逃してしまった作品も多く、悔やまれます)。すべての作り手や演者さん、映画祭のスタッフの皆さんに心から感謝したいです。

また、上映の合間には、前から一度は入ってみたかったレトロな雰囲気溢れる「大洋映画劇場」(映画祭の会場から5分ほど)にて朝十時から『プラトーン』を鑑賞したりも。また、天神のイムズのアートギャラリーで開催中の「バスキアとNYのアーティストたち」展も興味深く拝見しました。

私にとって約20年ぶりの博多、天神エリアでしたが、最高に充実したひと時を過ごさせていただきました。9月14日からはアジアフォーカス・福岡国際映画祭が始まるなど、9月の福岡は映画が充実しています。できれば一ヶ月くらいこの地に住み続けたいものだと夢見がちなことを思ってしまいました。また近いうちに訪れたいです。

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2017/04/21

レントン、シック・ボーイ、スパッド、ベグビーらのホームタウンへ

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エディンバラの中心部からしばらく歩くと、『トレインスポッティング』の主人公、レントン、シック・ボーイ、スパッド、ベグビーたちのホームタウンが見えてきます。同じエディンバラ市内でもいささか雰囲気が異なるのは、港がすぐ近くに迫っているせいでしょうか。上空にはカモメの鳴き声が絶えず聞かれ、道端では年配の方が(カメラを構える私に対して)ちょっと怪訝そうなそぶりを見せながら横切っていきます。リース(Leith)には、ありふれているけれど忘れがたい街の記憶が刻まれていました。

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2017/04/16

Trainspotting

エディンバラを訪れた際、『トレインスポッティング』のロケーションとして聖地化したこの場所に足を運んでみました。

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20年前、この通りを激走していた彼らに思いを馳せつつ。

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